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zoom RSS リアルタイム 新刊書紹介ジェフリー・ディーヴァー『魔術師(イリュージョニスト)』

<<   作成日時 : 2004/11/23 01:23   >>

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お待ちかねニューヨークへの帰還 やはりライムとアメリアの捜査は都市型犯罪がよろしい

四股麻痺であるベッド・ディテクティヴの捜査は頭脳的推理ばかりではない。膨大なデータベースを縦横に駆使し、警察の組織力を思いのままに動員する。犯罪現場の微細な遺留物に対する科学的検証による証拠主義、徹底した合理主義。相手は冷酷な殺人者でしかも容易ならざる知能犯。こういうお膳立てのミステリーの舞台は常にダークで魔物が棲んでいても気づかれない大都会に限る。
『ボーン・コレクター』『コフィン・ダンサー』と快調なスタートを切ったリンカーン・ライムシリーズも『エンプティ・チェアー』『石の猿』に至って、ローカル色と銃撃戦に変化、いささか主役のキャラクターに息切れした気配が見えたが、この作品では原点回帰したようである。

大掛かりな舞台マジックをイリュージョンと呼ぶようになったのは最近のことだろう。初めて来日したボリショイサーカスのキオが生きたライオンを消して見せたころは「大魔術」と称した。今回の犯罪者はニューヨークの街を文字通り舞台にして、衆人環視の中で凶悪な犯行と意表をつく脱走を繰り返す奇術師=魔術師=イリュージョニストである。

「ニューヨークの名門音楽学校で殺人事件が発生。犯人は人質を取ってリサイタルホールに立てこもる。封鎖されたホールからの銃声を合図に警官隊が踏み込むと、犯人も人質も消えていた…」

少年時代に夢中になった江戸川乱歩による怪人二十面相そっくりの消失トリックが冒頭で披露される。それだけではない。少年探偵団シリーズで名探偵明智小五郎と小林少年を翻弄した夢のようなトリックのいくつもが再現される。変装の名人、腹話術の達人、手錠抜けの巧者、破獄の天才。警察隊の十重二十重の包囲網を突破し、屋上へ逃避するも絶体絶命の窮地。しかし高笑いをしながらアドバルーンとともに星空のかなたに消える、発見されたアドバルーンには人形が残されていた。こんな名場面を思い出します。懐かしいな。「ボッ、ボッ、ボクラハ ショウネンタンテイダン!」ああ、あの怪人二十面相こそ犯罪イリュージョニストの元祖だったのではあるまいか。ただ二十面相は人殺しが嫌いだったなぁ。

ミステリーとマジックには騙しのテクニックに共通点が多い。このあたりの原理もストーリーに無理なく組み込まれて説明され、それが読者をミスディレクトする巧妙な仕掛けであるかもしれないのだが、マジックが大好きの私は途中おおいに楽しませていただいた。テーブルマジック系で軽妙な味わいのミステリーならばと、泡坂妻夫の数々の作品にも思いをはせる。泡坂の作品に出てくる奇術応用の犯罪や捜査は名人ならば実際に可能だろうと思われる技なのだが、この『魔術師』の大パフォーマンスとなると本当にそんなことができるのかといささか眉につばをつけたくなる。引田天功先生の意見でもお聞きしたいところである。

原点復帰で面白さは少し戻った。ただし、派手な演出も連続技が度をすぎれば観客の緊張感がうすれていくものだ。意外性がそのまま当たり前に転化してしまう。意表をつくつもりが観客にとってそれはすでに折込済みと、用意周到の心理に落ち着いているのだ。いくつもいくつも奇術的トリックを披露するのだが、大ネタは一つか二つで充分なのではないだろうか。

マジックを演出する者の心得には観客が沸きに沸いていても「惜しまれながらやめる」というのがあったような気がする。

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