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help リーダーに追加 RSS リアルタイム 原ォ『私が殺した少女』の魅力

<<   作成日時 : 2004/11/29 19:42   >>

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男はタフでなければ生きていけない、やさしくなければ生きていく資格がない。私立探偵沢崎、そのイブシ銀の男の艶が全編に滲み溢れ出す。

処女作『そして夜は甦る』でミステリー界にデビューし、一躍本格ハードボイルドの旗手と絶賛された原ォが1年半後に発表した第二作目である。この25日には新作『愚か者死すべし』が刊行されたばかりで、同じ沢崎探偵シリーズだから、これをよく読むためにもほとんど忘れている『私が殺した少女』をこの機会に再読した。本人も「われながら困惑するほどの遅筆ぶり」と後記に述べているが、それだけに構成の密度は高く、文章も練り上げられている。

西新宿に事務所を構える探偵沢崎に行方不明の家族のことで相談したい、目白の自宅まで出向いて欲しいとの電話がかかった。「まるで拾った宝くじが当たったような不運な一日は、その電話で始まったのだ」。
頑迷なまでに己の信条を貫く男。痩せ我慢を押し通す不器用。社交辞令は不要、本音でしか語れない男。非合法の世界と日常生活の境目に生きる。虚実の綾を心得た達観の大人。主人公沢崎の人生哲学に沿えば「不運」を表現するのにこれほど核心をついたレトリックはないだろう。
ヴァイオリンの天才少女が誘拐された。身代金を運ぶことになった沢崎は途中で暴漢ライダーに襲われ、身代金は奪われる。そして少女は………。と、この冒頭からの予想外の場面展開とスピード感にたちまちひきつけられてしまう。謎解きサスペンスとしても第1級の作品である。

『そして夜は甦る』は都知事狙撃事件という社会的スケールを背景にし、敵役、脇役の個性も光っていたが、本書は市民の日常的営みから起きる事件で、真犯人、犯行の真実は最後まで伏せられているから、前作のように読者がそれとなく感づく敵役とのやりとりはなく、沢崎の個性が際立って光る設定だ。

彼の矛先が警察という権力中枢、暴力団という凶悪組織、憎むべき犯罪者に向けられているときには、こたえられない爽快感を味わえるのであるが、相手はその種のやからだけではない。
特にこの作品では彼が詮索・究明する相手に「普通の人たち」が多く登場する。見栄をはる、体面を繕う、もったいぶる、世間体をはばかる。機嫌をとる、ゴマをする、追従する、尻馬にのる、鼻息をうかがう。彼自身は一切を拒絶するこれら擬態こそ私たち日常のありのままである。これら世渡りのための潤滑油が意図せずして真実を隠蔽する場合がある。沢崎は相手にとっては鼻持ちならない、しかし読者にとっては実に気のきいた粋なセリフでもって、これら真実を隠しているベールを剥ぎ取っていくのだ。そして読者はその粋なセリフが作中の人物だけではなく自分に向けられた毒気でもあることにハッとするのである。
女、子ども、被害者、病人にたいしても容赦はしない。そして内心の真実を自覚させ、それを語らせる。真実を知った人、真実を自覚した本人にとっては残酷な場合があろう。傷つく場合もあるだろう。しかし、救いを見出すこともある。

彼の強い自己貫徹は実はやせ我慢の裏返しであって本人はその弱さを隠そうとしない。だからこうなのだ。救いを見出した相手にとって、ハードボイルド探偵・沢崎は生きていく資格であるやさしさを秘めたタフガイなのだ。

オジサンの書評集「よっちゃんの書斎」>「ミステリーの部屋」をごらんください。

私が殺した少女(ハヤカワ文庫 JA 546)
原〓著

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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
私も原リョウさんのファンです。
「私が殺した少女」も2回くらい読みました。
新作も購入予定です。
ところで浜崎ではなく沢崎ですよ。
管理人@ブログの悪魔
2004/11/30 00:03

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