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zoom RSS 2002年1月12日 藤本ひとみ『ジャンヌ・ダルク暗殺』

<<   作成日時 : 2005/03/10 16:30   >>

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年頭にふさわしく、明日への展望を切り開く(?)、元気の出るミステリーに出くわしました。フランス歴史物をいくつも発表している作者ですが、初めて読む作品です。佐藤賢一の重厚さはありませんが充分に楽しめました。ジャンヌ・ダルクが1月6日生まれでもあり、これは正月用の読み物であります。

1999年にも映画化され、その記憶も新しいところです。英仏百年戦争の後半、フランス王国は再びイギリス軍の侵攻を迎えた。正統のフランス王シャルル7世は南フランスに退いて,圧倒的に優勢なイギリス王家の軍事力の前に,自暴自棄と無為の生活を送ってい
た。ここで田舎娘が神の啓示を受けたと自称し、シャルル7世の前に名乗り出る、その啓示のままにオルレアンに赴き、勇猛果敢に戦闘をリード、イングランド軍を敗走させ、敗色濃いフランス王国に勝利のきっかけをもたらす。まさに「救国の英傑」、しかも18歳の処女である。歴史上こんな英雄は他にいないですね。日本でも巴御前が強かったとは言え、神の子だなどとだいそれたことはなかった。
しかし、もてはやされたのはいっとき、為政者は彼女が邪魔になる。波瀾万丈の短い人生。宗教裁判の結果、異端者として火刑に処せられるがこれが19歳である。救世主なのか、神の子なのか、聖女か魔女か、あるいは狂女に過ぎないのか、この論点だけでも密度の濃いミステリーとして充分であります。

余談ですがドラクロアの作品「民衆を導く自由の女神」、右手の国旗を高く掲げ、後ろを振り向き「われに続け」と、私はこれはジャンヌ・ダルクを描いたものだと勘違いをしていました。明らかに間違い。豊満な乳房をさらけ出したあれはどうみても18歳にはない成熟の色気がありますものね。

この小説、もう一人のジャンヌが登場するところがミソ。娼婦、こちらが主人公。このジャンヌ、神の存在を否定し、信じるものは我が身のみ、ジャンヌ・ダルクを利用して権力の座にありつこうとする野心家なのです。文字どおり手練手管で軍部をたらしこみ、ジャンヌ・ダルクが神の使いであることを示すマジックを考えたり、この現代的な女性像が実に活き活きと魅力的に描かれています。聖母マリアよりはマグダラのマリアに愛着を感じるのが大衆ですから。

これも余談ですが「ジャンヌ・ダルク裁判」について一言。論点は彼女が神を見て神の啓示を聞いたかどうかの一点にあったらしい。つまり「神的存在」と直接接触できるのは聖職者に限られるのです。聖職者でない単なる信者がそんなことはできない。したがって啓示を受けたと主張する彼女は異端者なのですね。啓示を受けたというのが嘘だったと告白すれば神の子を騙った罪人となる、どっちにしろ罪は免れない仕組みだそうだ。実は聞かなかったと言って欲しかった、そうすれば軽犯罪で、火あぶりはまぬがれる、教会側にそんな気持ちがあったという説もあるが、どうだろうか。この1431年のジャンヌ・ダルク裁判は神学史上大問題を残してきたのですね。魔女と認定したままでしたから。ようやく1920年に至ってローマ教皇が彼女を「聖者」にしたのだそうです。で、いまは「魔女」であり「聖女」なのだそうだが、これはすごいミステリーだ。

この小説ではこんな屁理屈はでてこない、徹底的に娼婦ジャンヌの活躍を描き、娯楽性を追及しています。

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