![]() 宮部みゆきは多方面のジャンルで優れた作品がありますが私は現代の経済社会に直結した風俗をとらえ、社会との関わりの中で犯罪に巻き込まれていく一般庶民を丁寧に描く作品が彼女の真骨頂だと思います。 『火車』がそうでした。日本経済の爛熟期終末において「家計」がこうむった影響の重要な一面を経済の構造から説明してその悲劇と女性の自立がなす犯罪を活写した傑作との印象をもったものです。 『理由』もそうでした。高層マンションを舞台にした、一家4人殺人事件。戦後の貧しさを引きずっている人・新しい感覚の若者の登場。複雑にしかしリアル感を持った絡み合いに中から殺されたもの殺したものの理由が浮かび上がってきます。 『模倣犯』もマスコミに操られる大衆心理の怖さを描いていました。 私たちは常に社会との接点を深く広く持っているものです。その重みの中で生きていくことの難しさに私達は直面します。その時何が正義であり何が不正義なのかその分別さえ混迷しそれでも生きていくものです。 しかし、今回の作品はこの人間の背負う十字架というべき「社会性」がまるで欠落した仕上がりになっています。 主人公の男性はコンツェルンのオーナーの娘と結婚し、家族共々淡い水彩画ような透明な暮らしに満足しています。オーナーの仕事ぶり、日常生活は述べられませんがともかくお金持ちの好々爺です。オーナーの雇った実直な運転手が自転車にぶつけられ死亡する事件が発生します。運転手には二人の年頃の娘がいて、妹から父の思い出を本にしたいと依頼された主人公は事件の真相究明に乗り出すことになります。もしかしたら殺人かもしれない。父の過去になにか暗いものがありそうだと姉はこの出版には乗り気がありません………。 著者はあえて「社会性」を捨象したのでしょうが、そのため、実感できるストーリー展開もなければ、魅力的な「人間性」も登場しない結果となりました。 後半になってこの年頃の姉妹がクローズアップされますが、我が家にも同じ年頃の二人のじゃじゃ馬娘がいるものですから、比べてしまいます。こういう自己喪失の女性が今でも存在するのだろうか、居たとしても読者として共感するところはないし………。 『火車』に登場した主人公と比較すれば、同じ作者の描いた女性像とはとても思えません。古くさいタイプに退行しているのです。篠田節子の描くしたたかな女性たち(『女たちのジハード』、『コンタクトゾーン』)、桐野夏生『グロテスク』の常軌を逸した性格の姉妹にむしろ生き生きした血の通いを感じます。 ミステリーには社会性や人間性を描くことに重点をおかず、ただ鮮やかに読者の予想を裏切ること、その一本勝負の名作がたくさんあります。この分野でも著者には傑作がありました。『R・P・G』では本格のどんでん返しを楽しむことができたのです。 その意味でどっちつかずであって、待望した「二年ぶりの現代ミステリー」としては期待を裏切られた思いが残りました。 |
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「宮部みゆき」でブログ検索してみました。
「 宮部みゆき 」の検索結果で、「日記風雑読書きなぐり .. 」さんを紹介させていただきました。つながり系サイトです。 ...続きを見る |
日刊カタログ 2005/05/16 20:33 |
宮部みゆき 『日暮らし』 「癒し」を求める読者に応える作品ではあるが………
毎日、毎日を平穏に平凡につつがなく生きていくこと、それ以上のことは望まない人たちがそのご近所にたくさんいる。周囲と調和することで最も安らぎを得られるタイプ。町方役人・平四郎とその女房、平四郎の甥で佐賀町の藍玉問屋河合屋の五男坊・弓之助13歳、世話好きな煮売屋・お徳、植木職人・佐吉夫婦、本所元町に住む岡っ引き・政五郎、その子分で13歳のおでこなどなど。そこではこれらやさしさにあふれた人たちが助け合いながらおまんまを食っている。市井の片隅にこじんまりとした、あったかい人情に包まれた日常がそこに... ...続きを見る |
日記風雑読書きなぐり@WebryBlog 2005/05/24 00:15 |
「誰か somebody」宮部みゆき著【感想】
少し前に出た宮部みゆき「誰か Somebody」が新書で発売してたのでサッソク読みました。 個人的にハードカバーは絶対買わない派なので新書で発売して良かった(^o^) 事故死した運転手には、 二人の愛する娘と、ささやかな秘密があった。 今多コンツェルンの広報室に勤める杉村三郎は、義父でありコンツェルンの会長でもある今多義親からある依頼を受けた。それは、会長の専属運転手だった梶田信夫の娘たちが、父についての本を書きたいらしいから、相談にのってほしいというものだった。梶田は、石川町の... ...続きを見る |
日々の戯言 2005/09/12 16:28 |
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