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help リーダーに追加 RSS 04/01/25マイケル・ギルバード 『捕虜収容所の死』古い作品を見直す動きがあるがこれはいけない

<<   作成日時 : 2005/05/24 20:47   >>

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純文学ではなくともミステリーであっても時代を超えてなお新鮮さを感じさせる名作が存在するのは道理で、最近のミステリー通の間ではこれまで国内では翻訳刊行されていない古い海外作品を再評価しようとする動きがあるようだ。

そのひとつだが、英国のミステリー作家・マイケル・ギルバードのこの作品も1952年というから50年以上も前に発表され、昨年わが国にはじめて紹介されて、
「スリラーと本格ミステリーの要素とが渾然一体となった奇跡のような作品である」
「本書のように最初から最後までスリラーと本格ミステリー的な部分が絶妙なバランスを保っているのは、空前絶後といっていい」

と解説された、一級品との折り紙のついた作品である。

第二次大戦末期のイタリアにある捕虜収容所から英国将校を中心として200人をこえる連合軍捕虜たちが大脱走をもくろむ。ひそかに掘り進めるトンネル内でスパイ疑惑のかかる捕虜の一人が死体で発見される。大脱走のプロセスと犯人あての謎解きが平行して進む筋立てをとっている。
これは私の偏った鑑賞姿勢の悪癖としか言いようがないのだが、捕虜収容所からのスリリングな脱走ドラマなら1960年台初頭のスティーブ・マックィーン『大脱走』の映画の印象が焼き付いていて、さらに同種のいくつもの名作映像も記憶にあるものだから、映像と小説の違いは理解した上でなお、おもしろさ加減をどうしてもこれらと比較することでしか捉えようがないのだ。そこでこれらをこえるあれやこれやの大仕掛けを期待していましたので、率直なところ、なんだこの程度かと、期待はずれでありました。

スリラーと本格ミステリーの絶妙なバランスにしても当時は目新しかったのかもしれませんが今ではよく使われる手法であってもっと巧みな作品があふれているような気がします。犯人探しの謎解きであれば動機のバックグラウンド、人間の描写に作者の個性の輝きを見いだす楽しみがあるものですが、登場人物の数が多いだけで、要の人たちの人物像がはっきりと描けておりません。

というわけで、今の視点で古臭さをまぬがれませんでした。
では、その当時であったら目をみはる傑作と評価されたのであろうかと思いをはせます。
50年前、まだ敗戦の傷跡は深い。映画は『真空地帯』『原爆の子』『チャップリンの殺人狂時代』であり、ドラマは『君の名は』、歌が『岸壁の母』であれば、小説であれ映画であれ、仮に戦時下にある収容所からの脱走を描く作品ならば、バックに「反戦」「反権力」の思想があり、過酷な生存条件下の不屈の人間賛歌といったテーマではじめて感動を呼ぶ、そんな時代でしたから、戦争をゲーム感覚の冒険活劇として扱うことなど存外であり、お通夜の席のストリップショウであり、ヒトデナシのふるまいであって、目をそむけることはあってもこれを受け入れる土壌にはまるでなかったのだろうと思うのです。

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