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zoom RSS 04/02/05京極夏彦「巷説百物語シリーズ」その2 『後巷説百物語』

<<   作成日時 : 2005/05/27 23:32   >>

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『巷説百物語』『続巷説百物語』と続きましたこのシリーズもこれが最後となりますと後ろ髪ひかれる思いがいたします。御維新の10年と時代が変わりました。小股潜りの又市、山猫廻しのおぎん、事触れの治平といった一癖も二癖もある小悪党が好事家山岡百介を狂言回しとして江戸市中ならず全国をめぐり妖怪変化が引起したとしか考えられない怪事件を鮮やかに解きほぐし、逆に怪異・あやかしの仕掛け罠をこしらえ極悪人を懲らしめるというあの時代から40年の歳月が流れたのでございます。

さよう、あの『巷説百物語』の素朴な味わい、『続巷説百物語」のストレートな痛快さとはいささか異質な組み立てになっております。
生き残った百介も今は東京のはずれに庵を結び不思議話が好きな翁として若者相手に昔話を語る日々と静かに余生を送っております。時代が変わったと申しますのは一等巡査の矢作剣之介を中心とする若者たちは文明開花の申し子でありますから、世の中に怪異・変化など存在しないと、それは翁としても当時の体験から百も承知でございますが、どこか肌合いのあわない時代の変化を感じているのです。

西洋流の合理主義が浸透し始めている。
「(人も国も文化もどんどん成長して欲しいものです)今様というのは何時だって何よりも優れておりましょう。ただ………」
妖怪はすっかり役に立たなくなりましたと百介は謡うように言った。
「将に無用の長物、(みなさんの言うように)要らぬものになってしまったようですなあ」
それが百介には少し淋しかっただけだ。
直木賞受賞のこの最新作、この百介の慨嘆にエッセンスのすべてが凝縮されております。だから私も後ろ髪ひかれる思いがするのです。

百介はここでも六つの怪異譚を披露します。そのなかからヒントを得て一級巡査が不可能事件を解決する場合もあり(天火)(山男)
まるで無関係の奇怪至極な伝説(これは著者の無理を承知の完全な創作としか私には思えないが)(赤えいの魚)
あの当時仕掛けた怪異が新たな伝承と化して御維新の世にまで生きている不思議(手負蛇)(五位の光)
などいずれも40年前の小悪党たちの活躍を回顧するのでございます。
しかし、百介はこれが仕掛けであることは一言も言わないのです。どちらかといえば逆に世に不可思議はあるのだとあの当時とは立場を変えて若者たちに語りかける役割なのです。
そして最後に翁百介が仕掛ける怪談会(風の神)

百介は
理詰めで解釈する新しい文化風土に対しそれだけではないのだよ、
本当はあいまいなところがあるのが日本という国に生きる人々の血肉となった観念ではないかな。
ああそれも遠い昔になってしまったのかと。
おそらくわたしにはそう聞こえて共鳴するところです。

特に「山男」のお話しは印象的でした。
一神教の神=自然の原理は人間に過酷でありますが、日本の信仰にある自然は時に人間界に災いをもたらすが恵も与えるとする多神教のやさしさがにじんでおります。

化け物どころではない人間のなす残忍な犯罪が横行する現在を見れば妖怪変化と共存していた時代のほうがよほどよろしい。ある国の尺度でおしすすめる「普遍の論理」世界平和達成の行動がはたしてかの地の民族に適用できるのだろうかと………これは穿ちすぎでしょうかねえ。

どこかで日本人は生きる原理を見失ったような気がしませんか。昔に戻ればいいというものではないのですが………。
京極夏彦、政治を語る人ではない。しかし、精神文化の今のありように疑問を投げかけております。


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巷説(こうせつ)百物語
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内 容 ニックネーム/日時
今の時代眉を顰めることが多くて又市グループが必要でしょうか。
人間は昔からあまり変わっていませんね!
歳のせいかスピードが速すぎて。
毘沙門のPIG
2008/07/29 11:51

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