日記風雑読書きなぐり

アクセスカウンタ

help リーダーに追加 RSS 北方謙三『水滸伝』第七巻 「烈火の章」 ついに宋江が梁山泊に入る

<<   作成日時 : 2005/07/21 14:44   >>

トラックバック 0 / コメント 0

画像
戦闘シーンに手に汗を握りながら、一方でクールな今日的政治力学の世界が展開される。これも北方『水滸伝』の魅力だろう。

官軍の動きはこれまでは遅かった。だから、寡兵の梁山泊軍はそこにつけこむことができたのだが今、官軍が一斉に動き出した。青蓮寺が迎えた参謀、冷徹な現実主義者・聞煥章の官軍強化策が効を奏し始めたのだ。彼は裏の勢力青蓮寺にあって宋王朝の表のナンバーワン宰相・蔡京と気脈を通じ、表裏一体となる全軍の主導権を握ろうとしている。
聞煥章の働きで梁山泊の通信網は寸断され、宋江一行五人は味方との連絡を封じられたまま太原府付近の岩山の洞穴に孤立する。太原府の軍二万、国境の軍三万、北京大名府の軍五万が宋江捕縛のために動員される。岩山は一万六千の兵に囲まれた。徒手空拳の五人がこれをいかなる秘策で迎えるのか。新たに従者に加わった百姓の出である陶宗旺の特殊技能とは?
宋江逃避行のラストを飾るにふさわしい最大の見せ場が用意されている。

これだけの大動員をもって宋江をとらえられなかったこと自体は官側の敗北とするのが当然なのだが、青蓮寺首脳の受け取り方はそう単純ではない。
敗北の責任者、動きの鈍かった将軍たちを見せしめの過酷な刑罰で処する。しかし、本音ではこれまで不可能であった官軍の主導権を握ることに一歩近づくことができたと達成感すら抱いている。そしてこの方針をさらに進めるため禁軍最強の部隊を率いる童貫将軍とのコンタクトを画策するが童貫はさらにしたたかである。
だいたい、聞煥章は宋江ひとりを捕らえることには意義を感じていないのだ。恐るべきは梁山泊の組織力であってトップ一人をつぶしてもさほどのことはないと。現実感覚としてはそのとおりであろう。
宋王朝にとって梁山泊という敵の存在こそが富国強兵、強力な国家形成の原動力になると考えている。いつの世も「仮想敵国」は必要なのでしょう。
梁山泊は大衆の支持を得ている。ならば同じような主義を掲げる官製の賊徒をつくり大衆の離反する過激な行動を支援する。第二組合。あるいはかつて大衆運動が燃え上がった当時、右翼から金をもらっていた過激派があったことを思い出させます。
北方謙三は今日的政治力学を相当意識して古典を作り変えている。

北宋の歴史にはこの物語の前史として「王安石の改革」がある。青蓮寺派の政治思想は過去失敗したこの急進的な改革の理念を実現しようとするところにあるようだ。この改革の根本は,従来のような重税と節減といった単純な施策ではもはや解決できない破綻した国家財政を立て直すことにあった。王安石はそこで〈生財の道〉すなわち積極的に財源を生み出す方策をとり,改革は単に財政の問題だけに限られず,ひろく社会政策にも及んだ。1069年「王安石の新法」。これに対して既得権を侵害されることを恐れた官僚,大地主,大商人,それに宗室たちは猛然と反対した。結局改革は実らずむしろ新法党・旧法党の抗争から政治の大混乱を招いたのである。青蓮寺・総帥の袁明はこの改革が徹底していれば国家の衰退はなかったと認識しているのである。

ついに宋江は梁山泊入りし、晁蓋と再会。ふたりの英傑がかたく手を結ぶ。宋王朝もこれまで反目していた急進派の青蓮寺と保守派の蔡京さらに軍事の総帥・童貫らが挙国体制を築きつつある。
物語は宋王朝と梁山泊の本格全面戦争へ新たな展開を始める。


設定テーマ

関連テーマ 一覧

月別リンク

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文