能、歌舞伎にも「源頼光の鬼退治」の相手が土蜘蛛とされている作品がある。能 流派により《土蜘》とも《土蜘蛛》とも書く。五番目物。鬼物。作者不明。シテは土蜘の精魂の鬼神。源頼光(らいこう)(ツレ)の館へ侍女の胡蝶(ツレ)が薬を持って帰って来る。頼光は重病で苦しんでいるのである。そこへ怪しげな僧(前ジテ)が現れて,頼光に蜘蛛の巣糸を投げかけるが,頼光の太刀先に傷を負い姿を消す。物音を聞いて駆けつけた独武者(ひとりむしや)(ワキ)は目ざとく血痕を見つけ,その跡をたどって怪物の行方を突きとめることにする。独武者が武士たち(ワキヅレ)を連れて損城山にたどりつくと,岩陰の塚から鬼神(後ジテ)が現れ,土蜘の精魂であると名のって人々に巣糸を投げ,さんざん苦しめるがついに退治される(〈打合イ働キ・ノリ地〉)。お伽噺めいた鬼退治物の能である。巣糸のかたまりを掌中や身の回りに隠しておいて,次々に繰り出すのが見ものであるが,劇としての内容に乏しいので,近年は上演回数が減っている。 横道 万里雄 歌舞伎のセリフだが岩陰の塚から現れた土蜘蛛がおおみえ切って日本国の為政者を呪詛するのだが興味深い。 我を知らずや其の昔、葛城山に年経りし、 土蜘蛛の精魂なり。 此の日の本に天照らす、伊勢の神風吹かざらば、 我が眷族の蜘蛛群がり、六十余州へ巣を張りて、 疾くに魔界となさんもの。 もう一つのセリフ 汝知らずや、我れ昔、 葛城山に年を経し、土蜘の精魂なり。 なお君が代に障りをなさんと、頼光に近づき奉れば、 却って命を絶たんとや 葛城山での虐殺の恨み。 「君が代」=天皇の治世への反逆。死霊と化した土蜘蛛の末裔。怨み晴らさでおくべきかぁ〜。辺境の民の歴史、支配者の横暴の歴史を知る者には、共感できる呪詛です。 茨城県に生息していた土蜘蛛たち 殲滅させられ おそらくこの世にこんな思いを残して 逝ったに違いない。 |
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