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zoom RSS 荒山徹 『柳生薔薇剣』 アナクロかもしれないがとにかく面白い。

<<   作成日時 : 2006/01/23 16:11   >>

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「司馬遼太郎の透徹した歴史観と山田風太郎の奇想天外な構想力、さらに柴田錬三郎の波瀾万丈の物語展開を受け継ぐ時代小説作家がついに誕生した」文芸評論家・菊池仁
とこの賛辞はポイントをついているのだが、「ついに誕生した」とは認識不足じゃないか。 『高麗秘帳』に始まり『魔風海峡』 『魔岩伝説』 『十兵衛両断』と時代小説に新風を吹き込んだエンターテイナー、著者の実力はすでに定着しています。


そしてこの作品もまたチャンバラ剣豪小説が大好きな読者の期待を裏切らない傑作です。
朝鮮通信使という教科書的にはあまり知られていない朝鮮と徳川幕府との外交史をこの作品でももっともらしく活かしています。この「もっともらしさ」には著者の素養が裏打ちされていて私の「知的?」好奇心をいつもくすぐるのですね。そして豊臣秀吉の侵略行為にたいする朝鮮民族の怨念というモチーフは朝鮮外交に切り離せない今風さがあります。秀忠と家光の確執に伴うご存じ駿河大納言を擁立せんとする権力闘争。柳生一族の剣豪たちが繰り広げる死闘、華麗妖美な剣技の数々。これに摩訶不思議な朝鮮妖術対日本陰陽道と見せ場はたっぷりあります。
マンネリ化したと言えなくはない。風太郎も柴錬も五味康祐だってマンネリ化したがそれがどこかにちょっとした新奇の工夫があって楽しく読めた。
故国・朝鮮との縁を切るために美貌の女性うねが、鎌倉東慶寺に駆け込んだ。朝鮮で虐げられ日本に永住を決意した朝鮮の人々を、強制帰国させるために朝鮮使節団が来日したのだ

まず、この「駆け込み寺」の由来なのだが実に珍奇なものであってもここでの語り口でなるほどなるほどとご都合主義にちがいはないのだが、これ以上なくぴったりとストーリーの骨格になっている。

文禄、慶長の役の撤退に数万単位の朝鮮人が日本に渡ってきたという。これは「強制連行」だとは思うがこのお話では日本政府の庇護を求めてきた、いまでいう脱北者たちなのですね。朝鮮政府は「回答兼刷還使」を派遣し日本に拉致されたこれらの人たちを帰せと強力にねじ込んできたわけだ。朝鮮通信使にはそんな使命があったのかと虚実混沌、思わせぶりにして奔放な発想のストーリーを楽しむことになる。
幕府内の家光派と忠長派の対立や使節団の思惑もからみ、うね争奪をめぐって幕府は二分される。名だたる剣豪や忍者群の暗闘、朝鮮妖術師も加わり、血で血を洗う暗闘が始まった。東慶寺住持・天秀尼に特別な想いを寄せる三代将軍家光は柳生但馬守宗矩に密かに寺の守護を命じる。宗矩は嫡男十兵衛を凌ぐ剣客でもある実の娘・矩香を男子禁制の東慶寺に遣わすが、そこに現れた人物こそは………!?

しかも今回は女性陣が正義の味方として大活躍します。だいたい剣豪小説に登場する女性は魔性のものですが。本著のここが荒川流講談として新しいところですね。
絶世の美女にして無双の剣豪、柳生薔薇剣の使い手・矩香にも忘れがたい人がいた。
男色の家光が密かにこがれた天秀尼は凛然として朝鮮魔人と対決する。
そして朝鮮人女性のうねです。
男への愛と引き換えに祖国を捨て、異国で子を成し、、さらに祖国へ連れ戻されることを峻拒して、愛する夫と三人の息子を惨殺された。彼女が運命の破局を前にして奇跡をおこす。女の鑑です。
かつて私は満月でありました。最愛の夫、主馬と二人で輝く十五夜の月。男と女はともに半月です。半月と半月が結ばれて、美しい満月となるのでしょうね

歯の浮くようなこのセリフ!笑ってはいけませんよ。いまどき韓国のメロドラマだってお月様にここまでの情感過多はこめないでしょうね。子供のころに聞いて涙をながした浪花節、「壺坂霊験記」を懐かしく思い出しました。
「わたくしが朝鮮の人間である限り、あの人とは仇同士。でもそんなしがらみが何だというのでしょう。自分の属するもののしがらみに絡め取られて、愛する人を敵とする、人と生まれて、これほど愚かしいことが他にありますか。」きつく窘めるのでなく、こんこんと説諭するのでもなく、一人の女として楽しい思い出を追想、回顧するような口調でうねは云う

クサイ!!!なんとか賞の文芸作家は尻込みするでしょう。どうです、美空ひばりが泣きますこの演歌調!やはり、講談・浪花節・芝居の世界、大人の世界、日本人の世界だな。

まことに俗臭芬々たる大衆小説!万万歳です。



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