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help リーダーに追加 RSS 塚本青史 『始皇帝』 偉大な歴史の変革者、その末路はあわれ

<<   作成日時 : 2006/11/02 15:37   >>

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暴君、そして英傑!
血筋という運命、乱世に飛び交う謀略、三度の暗殺未遂を乗り越え中華を制したファースト・エンペラーの生涯を描ききる、畢生の書き下ろし!

始皇帝といえば歴史的には焚書坑儒に代表される非道の王として扱われてきた。しかし暴君であって英傑だったからこそこれだけの偉業をはたせたのだろう。 趙で人質となっていた秦の公子・子楚の子として生まれた政(前259)が、わずか13歳で即位し(前246)、列国を滅ぼして中華を統一、始皇帝を名乗り(前221)、権力をほしいままに、最後は悩乱して死す(前210)まで49年の短い生涯である。その中で中国最初の統一王朝を創建、それまでの封建制社会に終止符を打ち新しい中央集権国家を築いた。まさに中国古代史を書換えた立役者であった。そのあっけない死はまさに秦そのもののようで、あれだけの大帝国の秦は彼の死後わずか三年で滅びるのである。ただし、儒家思想を排斥し法家思想を実践した秦が採用した各制度がモデルとなって各王朝に継承されたのも事実であり今日的視点でその偉大さは見直されるべきだろう。

政の誕生から王位継承までの第一章から第三章までは政の父と政の二人を権力の座に送り込むまでの大商人呂不韋のくわせもの振りが読みどころである。なるほど「奇貨居くべし」深謀遠慮の故事だ。

第四章から第七章までは若き王・政が呂不韋の呪縛を自ら解いて実権を掌握し、能吏・李斯とともに政敵をたおし、暗殺者を退け、権謀術数と軍事力によって韓を手始めに、魏、楚、燕、斉、趙の戦国六雄を次々と滅亡させ全中華を統一、始皇帝をなのるまで、政にとって最も輝かしい時代である。友人、恩人、親子・兄弟も例外ではなく、中央集権を実現する過程では旧勢力、抵抗勢力を次々と排除していく。狡猾、冷酷非情な王ではあるが自己を実現することで新時代を築く、その若いエネルギーは方向性を見失って右往左往する政治指導者しかでてこないイライラ日本の読者にとって実に爽快である。

第八章と最終章の第九章はまるで趣がかわり狂乱する皇帝、暗愚の暴君に変貌する。その言動をいさめる側近を次々に処刑し、横暴の限りを尽くし国力を疲弊させるのが政である。不老不死の仙薬や羽化登仙にあこがれる………途半ばのまだ40歳にしてこの妄執にとらわれるが始皇帝であった。3000人の子供と食料、衣料、献上品、土産品、さまざまな職種の工芸人を乗せた数十艘の大型船を徐福に与え蓬莱島に住むという仙人を探索させる。著者は五次にわたる全国巡幸、驪山陵の兵馬俑の製作、匈奴への出撃と万里の長城建設、焚書坑儒などの偉業、暴挙をすべてまだ姿をあらわさない仙人へのごきげんとりだったとしている。太古より今日まで、いつの時代でも歴史を塗り替える専制者というものには狂気がつきものなのだろうか。その裸の王様ぶりは哀れを誘う。

政はあるべき君主論を説いた韓非子の考え方、君主専制主義を強化する政策に共鳴するが李斯の姦計にはまり、韓非を死に追いやる。私は法家の大思想家・韓非子に興味があるものだからこの作品の中でどのようの扱われるのかを注目していた。
「韓非子・五蠹編」には法治主義を阻害するものとして学者、遊説家、近臣など五者を挙げ国家の中身を食い荒らす害虫のようなものだとしている。そして君主はこれら害虫を排除し清廉な士を養成しないと破滅から免れることはできないと結論する。韓非子に傾倒しそれを実践して中国史上初の中央集権国家を築いた始皇帝が一方で韓非子が指摘していたとおりに内部の害虫どもによって破滅するのであるからその史実自体大いなる皮肉なのだ。

ところでその韓非子だが、この作品ではもう少し書き込んで欲しかったなと思うくらいあっさりとした登場だった。ただし、ひとつ、毒をあおる前に著者独自のひねった暗示を残して死なせるところがえもいわれぬ絶妙の味付けなんだと気がついた。著者はそこまで明確にしてはいないのだが、死を前にして
韓非がもらす一言「不老長寿の仙薬はやや苦いものです」
が政の深層心理にとどまりのちに催眠術的働きによって不老不死にとりつかれる。すなわち秦の滅亡は韓非の復讐であったとするのは私のうがった解釈なのだろうか。

一人合点して小説を楽しむ、また楽しからずやである。

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タイトル (本文) ブログ名/日時
始皇帝(by塚本青史)
★★★☆☆ 著者:塚本青史 出版者:毎日新聞社 定価:1995円 出版年月:2006年8月 ボリューム:443P 稀代の暴君か、乱世を治めた英雄か。 血筋という運命、乱世に飛び交う謀略、3度の暗殺未遂を乗り越え、 権力を ...続きを見る
ねぶかどねざる
2007/01/14 21:11

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2006/11/02 16:23
初めまして。塚本青史の作品はどれもこれも、俗っぽ過ぎます。書き方や言い回し、登場人物たちのセリフ等が変に現代的で、野卑で、ケレン味が強過ぎて、どうも鼻につきます。それにこの人、勉強不足なせいか基本的な事実誤認が度々見られますし、小説とはいえ史実と明らかに異なる記述やストーリー展開が多いですね。それに塚本青史は、実在の偉大な人物や立派な人物をよく、腹黒い嫌味な悪党やつまらない小人物として書き過ぎます。史実で伝えられる実像とあまりにかけはなれているので、読んでて興ざめします。おまけに脱線も多過ぎ。どの作品にも決まって、「悪少年(不良少年)」や「遊侠(やくざ者)」が出て来てそれらをストーリーに強引に絡ませるし、男女の絡みのお色気シーン(えらく野卑な)がしつこいです。どの作品もミステリーの要素を含ませているけど謎解きの面白さもないし、ラストに謎を明かされても、「何だかなあ・・・・」とゲンナリしてしまいます。この始皇帝だって通説の域を出てないし、面白くありませんでした。
ZODIAC12
2007/08/29 14:26
一応の功績を認めてはいるものの、始皇帝を単なる冷酷非情な暴君としか描いてないし、時代背景や歴史的意義、行った事の必然性を深く考えていません。通史に書いてある事を丸呑みにしてるだけといった印象を拭えません。これなら同じ始皇帝を扱った、安能 務(あのう つとむ)著「始皇帝 中華帝国の開祖」の方がよっぽど痛快で面白かったです。塚本青史作品は誰を主人公に書こうと、話作りがワンパターンでもう読む気がしません。いつも主人公は影が薄くて、周囲の脇役やどうでもいい人物にばかりスポットを当て過ぎです。読んでて一体誰が主人公なんだと言いたくなります。
ZODIAC12
2007/08/29 14:26
ZODIAC12さん
コメントありがとうございます。
塚本青史は始めて。その前に『韓非子』を読んでいて例えば貝塚茂樹の解釈とはこの小説は違うなと思いましたが、こういう古い時代は通説やら新説やらといろいろ。実像がどこにあるのかなんて歴史学者ではないのだから小説家がどう料理しようが面白ければいいのじゃないですか。面白いか面白くないかは読者しだいであり、ZODIAC12さんの見方もあれば小生のような見方もある。まぁそんなもんですよ。

よっちゃん
2007/08/31 17:51

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