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zoom RSS 竹田真砂子 『桂昌院 藤原宗子』 寂しさを気づけなかった女の激烈な一生

<<   作成日時 : 2007/06/20 22:30   >>

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桂昌院 1627‐1705(寛永4‐宝永2)
3代将軍徳川家光の側、5代将軍綱吉の生母。関白二条光平家司本庄宗利の養女。名は宗子。秋野、お玉の方と称す。家光側室六条有純の女お梅の方の縁で江戸へ下り、家光の寵をうけて綱吉を生む。1680年(延宝8)綱吉が将軍となって後、江戸城三丸に住み、三丸殿と称された。綱吉の厚い孝敬をうけ、1702年(元禄15)従一位に昇り、また弟本庄宗資をはじめその一族中幕臣として栄進する者も多かった。深く仏教に帰依し、僧亮賢、隆光等を信頼し、そこから生類憐みの令を極端に助長するなどの弊害が生じたといわれている。                         嶋 達也
平凡社世界大百科事典より。

「三つ子の魂百まで」とはよく言ったものである。お玉、「玉の輿」の語源とも言われる人物。八百屋の娘であるといわれるが実の父は定職を持たない流れ者風情の舎人であった。生まれながらの性分、幼児期に備わった体質をそのまま過激に押し通して5代将軍の母・桂昌院にまで上り詰める。自立した個性を求める現代人に置き換えたとしても尋常な個性ではない。
つむじ曲がり、ひがみっぽい、負けん気が強い、他人を見下す、敵愾心のかたまり、見栄っ張り、あまのじゃく、恩知らず、嫉妬深く猜疑心が強い、ひどくヒステリックなエゴイスト。と、人間としては負の性情で固まった人格だといえよう。
大奥入りしてからも変わらない。この負の性情を生きるためのエネルギーとした女である。規範、人倫という言葉にはおよそ縁のない成り上がり者である。いつまでたっても品格は備わらない、知性は見えない。大奥に君臨したとはいえ春日局のように幕政を掌握するだけの才覚はない。ただし、並以上の美貌に自信をもち、男を喜ばせるテクニックには長けている。そして桁はずれた強運の持ち主である。段取りを踏む上昇志向というよりはその場その場での上昇願望を一生貫き通しえた女性である。全編を通じこの凄まじい個性の生き様に圧倒される。実に嫌味の権化といえる人格なのだが、しかしよくもここまでやったものだと拍手を送りたくなるのが本作品の醍醐味であろう。

三つ子の魂はお玉だけではない。主人公の周囲の人たち、母のおくる、姉のこん、そして六条家の姫・瓏子もまたそれであり、これら際立った個性の競演を大いに楽しむことになる。
特に瓏子の存在感は大きい。貧乏公家の娘、幼い頃からのお玉の主人、男色の家光にあてがうべく春日局に見出された隠し球、家光の側室、大奥の取締役梅の局。お玉とは対極にある個性である。美人とはいえないが公家の姫として作法、教養、常識 文芸をそなえ、俗人とは別世界にある貴種である。感情を表に出さずあらゆる境遇をおっとりとして受け入れる女性である。瓏子はお玉のすべてを飲み込む。お玉は瓏子のすべてに歯向かう。瓏子とお玉のもつれ合いは愛憎混沌とした思いの発露なのであろう。お玉がついに気づかなかった瓏子の慈愛、瓏子の本性としてのしたたかさ、そして瓏子に対するお玉の屈折した感情表現に著者の筆の冴えが見える。

他人ばかりか身内までも敵視したお玉である。一方誰からも信頼されることはなかった。感情のおもむくままにわがままのし放題で最高の地位に就いた女性である。挫折の経験もせずに生涯を終えた。こんなにもはなもちならないサクセスストーリーは読んだことがなかった。にもかかわらず主人公に親近感を覚えるのだ。それはお玉が孤独という絶対的寂寥感を犠牲にして立っているからではないだろうか。幼児期の濃密な描写に比べ綱吉が将軍に即位したのちは著者自身が感情を抑制し事実の記述のような文体に変化する。その行間には、ある意味で気の毒な一生だったんだなと感じられるところが多かった。瓏子が去り、母は狂い、こんはお玉を拒絶した。どうしようもない寂しさに彼女は覆われていたにちがいない。そして寂しさを自覚できない個性に、滑稽と同居している哀れさを感じた。

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