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help リーダーに追加 RSS 船戸与一 『満州国演義3 群狼の舞』 船戸与一が冷酷にあぶりだす人間性悪の極限図。

<<   作成日時 : 2008/03/29 16:57   >>

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人の性は悪にしてその善なる者は偽なり。人間の本性には生まれつき利益を追求する傾向があり、それに従ってゆくから、他人と争いになって譲り合うことがなくなるのである。また生まれつき嫉んだり憎んだりする傾向があり、それに従ってゆくから、他人を害するようになって誠心の徳がなくなるのである。(荀子 性悪篇)

昭和7年
1月上海事変、2月リットン調査団来訪、2月3月血盟団井上元蔵相と団琢磨暗殺 3月満州国建国宣言、5月馬占山抗日戦 朝鮮人の上海事変祝勝会場への爆弾テロ 五・一五事件、 9月日満議定書調印(満州国承認)、10月リットン調査団報告書発表
昭和8年
1月 山海関事件、3月日本軍熱河入城 国際連盟脱退 5月塘沽停戦協定締結

『満州国演義3 群狼の舞』で描かれるこの昭和7〜8年の主な事件をピックアップするとこうなるのだが、すべてその背景が詳述されているのでさながら昭和史の勉強をしているようだ。とはいえ、あくまでもダイナミックな小説を夢中になって読んでいるのであって、知識を習得するための勉強の姿勢にはない。満州の情勢と日本国内の状況が呼応する巨大な狂気の渦を実感するドラマにのめりこまされる。これら事件が直接間接に関わりあう4人の兄弟の視線で語られているからだろう。

ところで最近はいろいろな「真実」を声高に主張する向きがある。たとえば「南京大虐殺」「従軍慰安婦問題」「沖縄集団自殺への軍の関与」「侵略戦争とする歴史観」などこれら従来の通説には誤りがあるとの指摘だ。ただ単に誤りがあるとの指摘にとどまらない。そんなことはなかったのだという「真実」を構築しようとしている作為が鼻につくのだ。

満州国建国。それは日本中が熱望したものの実現であった。そして
「なあ軍人さん、いったいなにをぐずぐずしているんだい?早く盗っちまえよ、熱河を!」
とさらなる大陸侵攻への欲望が拡大する。だれの欲望がと問われればマスコミを含めた日本中の狂気がと著者は答えるであろう。「熱河侵攻」は満州国経営を支える財源確保のために、ここで栽培される良質の阿片マーケットを関東軍としてはどうしても手に入れたかったからだ。こういう見方は始めて知ったがいかにも船戸与一好みの着眼点で面白い。事実そんなこともあったのだろう。

昭和の狂気は五族協和・王道楽土の建設、そして植民地化されたアジア諸国の解放として隠蔽され侵略が正当化される。このプロセスもひとつの読みどころとなっている。
関東軍の動きに批判的だった外務官僚の太郎はそれが欺瞞だと知りながらも「国家を創造することは男の最高の浪漫だ」と新国家建設にのめりこんでいく。そして熱河を盗れとの作戦行動に協力していく。その自らの変質を王道楽土建設、アジア開放として合理化していく。そこには戦争という狂乱がかくして人間を醜悪なものに変えていく劇的な描写があった。
一方、憲兵の三郎は皇軍の軍事行動を正義の実現と信じていた実直な軍人である。しかし彼は兵卒たちのよる住民への殺戮、略奪、強姦の現場に遭遇する。あんたにはわからん、これが戦争なんだとうそぶく彼等の声に慄然とする。そして極寒の地で死に直面する兵士たちをよそに、上級将校たちが放蕩三昧にふける痴態を目撃しこれが天皇陛下の軍隊かと激怒する。彼はそこにある巨大な欺瞞に気づきつつある。太郎とは異なる悲劇が始まろうとしているのだ。

著者は戦争が人間を醜悪に変え、人間の醜悪さが戦争を拡大させる悪循環を描写する。
関東軍特務機関の間垣徳三が語る。五族協和だの王道楽土だのはもともと方便に過ぎんのだよ。真理はただひとつだ。だれかが誰かを食う。人間はね、他の人間を食うことによって成長する。民族も同じだよ。わが大和民族はひとまず他のアジア民族を食う。それから白人種を餌にしていく。戦争はでっかい経済行為なんだ。戦争のための産業が生まれ死者によって人口調整を行う。これほど能率的な経済行為はない。
冷酷な人間論、戦争論ではあるが妙に現実味を感じさせるところがあってこわいこわい。

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本の憂鬱 03282008
 戦後の日本作家で司馬遼太郎ほど愛されたひとはいないのではないか。ぼくはこの小説家に対する読書の守備範囲は決まっている。一部の例外を除けば、幕末後を舞台とする小説、そして評論、エッセイ、対談に偏っている。これまで相当数、眼をとおしているので、この網の目から抜け落ちる本は限られてしまった。今月、2冊、未読の書を手に入れることができた。その1冊、氏の最後の対談を編んだ『対談集 日本人への遺言』(朝日文庫)を読んだ。相手は田中直毅、宮崎駿、大前研一、榎本守恵、武村正義、ロナルド・ナビの各氏である... ...続きを見る
つき指の読書日記
2008/03/29 17:48

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