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help リーダーに追加 RSS ケヴィン・ギルフォイル 『我らが影歩みし所』 クローン人間が仮想現実「シャドーワールド」で

<<   作成日時 : 2008/05/10 17:27   >>

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クローン技術が不妊治療に実用化された近未来。ただ人々の生活が今より大きく変わっているわけではない。せいぜいパソコンゲームソフトがかなり高度化しているといった程度。もしかしたら近い将来ありうるかもしれないと思わせる時代設定である。だが………。

クローン生殖医療には法的にいくつもの制限が課されているし、政治的に反対する勢力もまだまだ強い。そして神の摂理に反するとしてこれに携わる医師や積極推進論者を次々と暗殺するテロリスト・ミッキーがいる。実際、現実世界のあちこちに唯一神の教えを信じて大量殺戮を行う集団がいるのだから、ここで登場するような狂信的宗教集団・ハンズ・オブ・ゴッドがあってもおかしくはない。ストーリーの合間にミッキーのカルト的神学論が披露されるのだが、本筋とはさほど関係はないがこれはこれで面白く読ませる。

不妊治療の第一人者、この暗殺者に狙撃され命拾いをしたデイヴィス医師だが、次には愛する一人娘が何者かに惨殺される。そこで彼は娘の遺体に残された精液を用いてクローン児・ジャスティンを創りだす。成長すれば犯人と同じ容貌になるはずだから、その成長を観察しながら犯人に肉薄しようと。なるほどねぇ!この犯人探しは近未来小説ならではの着想である。
ジャスティンの秘密をめぐってデイヴィスの妻、同僚の女医、ジャスティンを育てる夫婦、私立探偵など関係者がいろいろな事件に遭遇することになる。ここはやや退屈するサイドストーリー。

そして著者が用意したもうひとつの仕掛けが、全世界で数千万人が参加している仮想現実ゲーム、「シャドー・ワールド」だ。犯罪者の子がその犯罪者を追うことになるのだろうか。
14歳に成長したジャスティンは、ゲーム世界で頻発する女性惨殺事件の犯人こそが、現実世界を賑わせている殺人鬼ウィッカーマンであると考え、犯人を追い詰めようとする。
私はあまり詳しくないのだが実際にインターネットを通じてサーバー内に作られた仮想社会に世界中から同時に数百人から数千人が参加するロールプレイングゲームがあるという。夢中になりすぎて病的依存症が多発するなど問題が発生しているのだそうだ。「シャドーワールド」はこれをSF的に進化させたもののようで、現実と非現実との境がわからなくなるほどのリアリティを伴うゲームにしている。本著のかきぶりもこのゲーム上の犯人追及のほうが現実世界のそれよりスリリングに書かれているので読者にとっても困惑しながら読むことになり、そこに奇妙な味わいがある。

ありうるかもしれない時代設定なのだが、私にはやはり仮想の構成にたったミステリーであって、もはや歳なのだろう、どうもなじめないのだ。著者の都合のよい具合に振り回されかねないとの先入観があるものだから、物語にのめりこむといった読み方はできない。むしろ悪い癖だが不具合をあげつらうことになりがちなのだ。たとえば愛する娘を殺されたのであれば殺人者のクローンを作るよりも娘のクローンを作るのが自然ではないか………、あるいは、テロリスト、猟奇犯罪に対する近未来の警察力があまりにもお粗末ではないか………などが気になって仕方がなかった。


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