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zoom RSS 宮本昌孝 『海王 下』 これはまさしく大衆小説の傑作だ。

<<   作成日時 : 2009/05/10 23:34   >>

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天下一統の大業と世の安寧を目指しながら、謀反に斃れた足利将軍・義輝。その夢を継ぐはずだった信長もまた本能寺に斃れた
下巻は光秀、秀吉、家康らが信長の覇業を継ぐべく義輝の遺児・海王を天下争奪戦略の隠し玉にするという破天荒なストーリーだ。歴史の流れから言えば、光秀が滅ぶ山崎の合戦が詳細に語られ、織田・秀吉連合軍と家康軍のいわゆる小牧・長久手の戦いとその終戦処理で終わるのだが、宮本昌孝が広げに広げた大風呂敷の中身はあれやこれやのお楽しみがてんこ盛りだった。

九州では大友宗麟 島津義久、竜造寺隆信らの覇権争いにイエズス会が絡み、これに神屋紹策 島井宗室ら博多商人がしたたかに離合する。今井宗久 津田宗及、千宗易(千利休)ら堺の文化人にして政商たちと中央進出を企てる博多商人。彼らは政権の帰趨をにらみながらイエズス会の戦闘力を利用しつつ光秀、秀吉、家康をバックアップする。よくもまぁこれだけストーリーのスケールを広げたものだと感嘆する。

戦国の雄傑、続々登場!男たちの熱き生き様ここにあり!
伊藤一刀斎とその弟子、小野善鬼・神子上典善。 細川藤孝と忠興 玉子(ガラシャ)。堀秀政。巡察師ヴァリニャーノ、服部半蔵、黒田官兵衛、加藤虎之助、前田慶次郎、柳生宗厳。
これらの登場人物はただ名前だけが出てくるのではない。それぞれがその場面にぴったりの名脇役を演じるのであるから、まさに「続々登場」の豪華絢爛である。
ラジオで聞いた頃の講談、浪花節、人情噺の名調子。新国劇風のサワリやら、五味康祐、柴田錬三郎の剣豪小説にある剣客らの語り口など大衆演芸、大衆小説が「大衆」の心をグッと捉える勘どころが満載である。

北の庄、落城シーン。柴田勝家と死を共に決する信長の妹・お市の真情。勝家が自分をやむをえず敵にした前田利家に人質である利家の娘・摩阿姫を殺さずに返そうとする男心。
こういう名場面ではあれやこれやと理屈をひねくりだしてはいけない。理屈抜きである。
「人間はやはりこうでなくてはならない」と私は熱くなります。

そうした白眉がこれ。
海王、「武士は誰かのために死なねばならないのでしょうか」
海王のために命を捨てた御牧三左衛門の死について剣聖・一刀斎はこたえる。
「武士の死とはすなわち生。御牧どのにとって海王さまのために死ぬことが、武士として生きた証であった。さよう思し召されよ」
「また将のなすべきは臣ひとりひとりによき働き場所を与えること。働き場所とはすなわち死に場所でござる。それは将の喜びであり、同時に苦しみでもある」
海王は思った。自分に武門の棟梁の器量はない。誰かに死に場所を与える決断など到底できぬ。
くさいセリフである。最近では一口に「大衆」と括ることのできる層はないのかもしれない。しかし先日介護保険証書が郵送されてきた私。このくさいセリフに清爽を感じる年代層があってもいいのじゃあないだろうか………と思うのである。

大衆小説よ、永遠なれ。


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ゆきなの日記
2009/05/15 01:12

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