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zoom RSS ジェフリー・ディーヴァー 『007 白紙委任状』 リンカーン・ライムの捜査手法でボンドが凶悪犯に迫る

<<   作成日時 : 2011/11/22 14:55   >>

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画像僕は大学生だったが、『007は殺しの番号』を家庭教師先の坊やと渋谷の東急文化会館で観たときの、これまでの映画にはなかった新鮮なインパクトを忘れられない。あのダンディズムとセクシャルな美女とのからみ、大仕掛けで荒唐無稽な大陰謀と闘うハードなバイオレンスに魅せられて以来、ボンド映画とはつきあいは長い。
フレミングの原作は『ムーンレイカー』
他2〜3作を読んだ。当時の和製冒険活劇小説に『野獣死すべし』でヒットした大藪春彦の作品があって、愛読していたものだが、これとは異質な「007」のバタ臭いスマートさによけい魅力を感じたのかもしれない。ただ、ジェームズ・ボンドのイメージといえば小説よりもスクリーンのヒーローだ。
この懐かしい最強の秘密諜報員をディーヴァーが現代に復活させたという。『ボーン・コレクター』で始まったリンカーン・ライムシリーズとのつきあいも長い僕としては、どんな味付けになったものかと興味をかきたてられたのです。

齢は30代。身長183センチ、体重78キロ。右の頬に8センチほどの傷がある。これがイワン・フレミングの創ったジェームズ・ボンドだ。

ボンドの風貌は原作と同じです。ボンドといえば酒と女と拳銃とカジノですが、今回は拳銃とカジノのウンチクはありません。ワインとカクテルは贅沢な食事にふさわしく、読んでいる私はまったくの門外漢ですが、いかにもボンドらしさ、高級趣味の持ち味がたっぷりで楽しませてくれます。

敵だろうと味方だろうと女をメロメロにさせるのがスクリーンのボンドです。ボンドは女好きな世の男どもの夢でしたが、この作品ではそれよりははるかに品がいい、それでも勿論もてるのですが、凛々しいダンディです。女性との会話は相変わらず洒落ています。ハードボイルドタッチです。ところで登場する女性たちですが、ボインボインのボンドガールではない。性的魅力を誇張しないでむしろ頭脳プレイに巧みな人物です。映画のように寝技でたらしこむことは出来ませんから、その分ボンドは上品に映ります。映像ボンドよりは原作ボンドに近いのかもしれません。

ボンド映画の楽しみに大小さまざまな珍奇な武器がありました。ここではそれはありません。ディーヴァーらしく高度な情報端末として特殊スマートフォンが活躍します。ボンドは単独の活躍に見えて、いくつもある英国諜報機関のバックアップを得ている。このスマートフォンを使い、彼らと交信し、まるで欧米諸国の諜報機関が収集している全ての情報にアクセスできるばかりのすぐれものです。ピストル、ボンドの愛用はドイツ銃器メーカーのワルサー社製PPKだったのですが、ここではワルサーPPSが使用されています。2007年に発表されたPPKの後継機種で、時代の変化を的確に追うディーヴァーの職人的配慮がうかがえます。

裏表紙の長い説明によれば
イギリス政府通信本部が傍受したメールは大規模な攻撃計画が進行していることを告げていた。金曜日までの六日間で、敵の組織を特定し、計画を阻止しなくてはならない。イギリス諜報界が阻止作戦のために緊急指令を発した相手はジェームズ・ボンド。暗号名007。殺しのライセンスを持つエージェント。ミッション達成のためにはいかなる手段も容認する白紙委任状が彼に渡された。攻撃計画を握る謎の男<アイリッシュマン>を追って、ボンドはセルビアに飛ぶが、精緻な計画と臨機応変の才を持つ<アイリッシュマン>はボンドの手を逃れつづける………セルビアからロンドンへ、そしてドバイへと続くボンドの決死の追撃。その果てに明らかになる大胆不敵な陰謀の正体とは?
映画007の場合、巨悪の正体とその陰謀はストーリーの早い段階でわかっているのが定石である。観客が期待するのはボンドが派手な演出とともにこれを阻止する、そのスリリングな冒険のプロセスだったのだ………とこの作品を読んでいて思い当たりました。

ディーヴァー作007は「敵と陰謀の正体」を突き止めるプロセス、つまり謎解きに傾斜がかかったストーリーになっていて、この構図!いかにもディーヴァーらしいなぁ。

ディーヴァーのこれまでの作品、たとえばリンカーン・ライムシリーズでは犯人と犯行目的がなかなかわからない。探偵側は断片的な情報を丹念に集め、これを科学的に分析し、犯人を突き止めていく。あるいは次の犯行を予想する。奸智に長けた犯人は捜査陣の手口を見通して、これを嘲笑うかのように犯行を繰り返す。知恵と知恵の勝負のプロセスを楽しむものでした。

アイリッシュマンを追うボンド、ボンドの追求をかわすアイリッシュマン、ボンドをターゲットにするアイリッシュマンの必殺の罠。これは凶悪頭脳犯対リンカーン・ライムが繰広げるマンハントチェイスと相似形の構図にあります。そして読者がたっぷりとミスディレクションにはめられたところで巨悪の正体が明らかになる。ただ巨悪といっても、諜報機関が対象にする国際的陰謀団の首魁というよりも警察組織が追う凶悪犯に近いイメージ。アイリッシュマンとの派手なバイオレンスシーンはたっぷりありますが、明らかにされた大陰謀を粉砕するアクションは思いのほかあっさりしています。

ボンド映画の初期の作品を懐かしみ、ディーヴァーのこれも初期の作品を懐かしむ思いで読む。両方に親しんだ読者のための楽しいコラポレーションでした。


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2011/11/22 20:12
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Akira's VOICE
2011/12/08 11:57
書籍「007 白紙委任状」期待値高過ぎ、やや消化不良
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soramove
2011/12/24 10:19

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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。
履歴書の添え状
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2012/01/12 09:39

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