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zoom RSS 2002年6月1日 「旧い日本的なこころ」を捨て切れない男たち「蚊トンボ白髭の冒険」

<<   作成日時 : 2005/03/21 19:44   >>

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今、無残にもメルトダウンしつつある「旧い日本的なこころ」を捨て切れない男たちの哀切を限りなく滑稽に、さらにふんだんにバイオレンスを取り込んで描いた現代の寓話といえよう。
それが藤原伊織『蚊トンボ白鬚の冒険』だ。


超人的な格闘術を身に付けた主人公と凶悪な天才、不死身のソフトウェアプログラマーとの1対1の決闘シーン、その圧倒的迫力はそれだけで充分堪能できる。それがあまりにも印象的であるから、内容にはいささか濃厚さにかける嫌いがあって、同様のテーマであった前作『手のひらの闇』に比べ読み応えは軽量である。

画期的交通システムの開発技術をもつ、しかし今はマイナーな中小企業に着目した若い天才ファンドマネージャーが闇社会と結託してこの買収を進めていくが途中でやくざから負われるハメにおちいる。これを偶然に助けることになるのが、ただのんべんと毎日を生きている水道職人の貧乏青年・主人公。しかし、突然身に付けた超人的筋肉瞬発力。昔の恋人の影につきまとわれながらこの主人公を追いかける天衣無縫・好奇心旺盛な漫画的美女。彼らを追う旧いタイプのインテリやくざ。その親分は莫大な利益を生む暗号ソフトを開発した子会社を傘下に治めている。その暗号ソフトを開発した天才プログラマーはレイプ殺人魔であり、不敗の殺人技を持つ不死身の狂人。

マネーゲームからITバブルと今流行の世界水準、これがディファクトスタンダードであるとの押し付けを前にしり込みして、義理・信義・誠実・人情の旧弊にこだわって生きるしかない、あるいはそれに哀愁を感じる男たちが流されていく。そんなお話です。、流されつつある世代からみると結構共感できるところがあってスカッとした読後感でありました。

「株式市場では自分がいくら美人だと確信する女性がいても、彼女に投票しちゃいけない。みんなが美人だろうと思う女性に投票すべきというのが原則です。つまり個人的な確信は棚上げにして世間の人気を呼びそうな株を買う。じっさい、その株は値が上がる」
「ふうん。世間の錯覚の仲間入りをするわけね」

小説家にしてはいい指摘をしている。

しかし現実はそれ以上に異常である。
いまのマネーゲーム社会は
「こういう人を美人というんですよ、このタイプをブスと呼ぶんです」
などともっともらしい尺度をあたえられ、この「壮大な演出」をどこかの国に仕掛けられ、踊らされているのかもしれないのである。
日本国債の格付けがボツワナより低くなってしまった。
そうか、こういうのをブスというんだ。
しかし、これではあまりスカッとしないではないか。

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文庫本で発売、バイオレンスもふんだん、藤原伊織「蚊トンボ白髭の冒険」
「蚊トンボ」、「冒険」なんていい大人が読むには題名からして人を食った本だと誤解されかねない。さらに内容が超能力者ものなのだからばかばかしいと思い込まれる方も多いに違いない。 ...続きを見る
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2005/05/08 08:08
藤原伊織氏のガン発症
<藤原伊織さん>小説誌に寄稿し食道がんを告白 [ 05月22日 19時22分 ] 毎日新聞  直木賞作家の藤原伊織さん(57)が、食道がんを発症し、5年生存率が約20%と告知されていることが分かった。発売された小説誌「オール読物」6月号(文芸春秋)に寄稿して、自ら明らかにしている。  寄稿によると、がんが分かったのは今年2月中旬で、3月中旬から断続的に入院して放射線治療などをしていた。6月に4回目の入院予定。  藤原さんは、95年の作品「テロリストのパラソル」で江戸川乱歩賞と直木賞... ...続きを見る
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2005/05/25 01:39

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