03/02/23 高村薫の直木賞 『マークスの山』 その1

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このほど改訂版が発刊された。
帯には「警察小説の金字塔」とある。まさに文字通りの傑作である。
マークスと名乗る二重人格の青年の狂気と仲間の秘密を共有しあった政・財・官・法曹界のエリートたちの狂気、二つの狂気が交錯する暗闘に警察組織が翻弄される。ほとんど手がかりがないまま進行する連続殺人事件の真相を追う合田刑事たちの地道な捜査活動、そこで繰り返される試行錯誤、警察という厳しく管理された組織とそこで生きる男たちの苦闘ぶりだけでなく、それぞれの個性、喜怒哀楽を活写する。
年がら年中顔を合わせ、角を突き合わせ、怒鳴りあい、悦び合い同じ成果と失意を共有してきた男らも、ときどき生活も感情も違う他者の分厚い壁を見せる。捜査が微妙な山場を迎えているそのとき、ふいとそんな壁を見せる方が悪いのか、見せられるほうが悪いのか、合田はちょっと考えてみたが、たぶん後者だという答えは初めから出ているような気がした。


そして警察ならずともどこの組織内もそうなのだ。私の生きてきたところもそうであったと振り返えれば、このリアル感は警察組織を知らない者にとってもホンモノに相違ないのである。

「警察小説」といってもさまざまのタイプがあるような気がする。
探偵役が警察であるミステリー
組織としての警察がその機動力を発揮し凶悪犯を捕らえる警察賛美型のミステリー
主人公が警察官であるがはみだしものの一匹狼で組織の論理を度外視し、スタンドプレイで大活躍するアクション冒険型のミステリー
警察を権力機構の象徴と位置づけその反動性・反国民性を暴くことに主眼を置いた社会派型ミステリー
組織の論理性と警察官個人の人間性の葛藤を中心にした文芸型ミステリー

本書は一口にこれrだと言い切れない新しいタイプの「警察小説」である。

続く

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この記事へのコメント

なほまる
2005年09月08日 17:27
TBありがとうございました。

記事読ませていただきました。
随分内容が違うようですね。びっくりしました。
両方読み比べてみるのが一番良いのでしょうが、
残念ながらそこまで気持ちの余裕がないです(笑
爆読でしたので、私はこっちの方がタイプだったのかもしれません。

この記事へのトラックバック

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