02/08//25 服部真澄『バカラ』 IT事業で成功した若き企業家がのめりこむ地獄

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びっくりしました。2002/08/24の日経夕刊トップによれば「カジノの解禁を求める動きが各地で活発になってきた」「自治体が財政難に苦しみ、地域経済が停滞する中、活性化の起爆剤にしようと官民の研究会が次々と発足」特に石原都知事が積極的であると。記事に触れられていないところは声のあるところ利権ありの原則です。
2002/08/25


『龍の契り』『鷲の驕り』と大型の国際謀略小説でデビュー、ミステリーファンを沸かせた服部真澄が今度は日本を舞台にしたネットバブル崩壊後の経済、政治の世界を描いた異色作を発表した。公営カジノ開設を巡る利権争い、巨大な資金を動かす新興のネット長者、闇の政治資金で政界に君臨する大物フィクサー、こうした素材では陳腐なストーリーかとあまり期待しないで読んだが、そうではなくなかなかの力作であった。

表面は優雅な生活を送っているが、実は賭博にのめりこみ、会社のカネに手を出し、それでも賭博をやめられず、のめりこんでいく雑誌記者。賭博場で知り合った男、コンピューターソフトで成功し今はネットバブル崩壊の犠牲者もまた処理しきれない借財に悲鳴をあげている。

かつて阿佐田哲也がギャンブルの魔力を描ききった『麻雀放浪記』では家屋敷を売り払い、挙句の果てに女房を売り飛ばす男たちの姿があった。バクチ好きの「業」のようなものを描いて、共通のものを感じた。

服部真澄の『バカラ』
さらに現代の企業、特に新興の企業の経営自体に潜む賭博性、
バクチにのめりこむと同様に麻薬に酔いしれるような危うい若い起業家の野心を
とろとろと煮詰めるがごとく丹念に映し出してゆく。
インターネット事業で成功し長期信用銀行を買収した男、日継が一方の主人公である。
築いてしまった楼閣の維持には、さらに莫大な金がかかる。置いたばかりの箔が剥げぬようにしておくだけでも、湯水のように、金がいる………。日継は顔をしかめて、勝者の劫罰を思った。成り上がりさえしなければ、満足感が約束されているというのは、戯言だ。いつでも、何かが足りない。埋めても埋めても、足りない。いくつの壁を越えても、物足りなさが、いらいらとまとわりつく。わが世の春を謳歌しているかのような今日のこの男も、やがて知るときがくる。パーティーが終わって、荒野のような空間に一人残されたときの虚しさときたら………。


どの登場人物も「欲」を追求してやまない人々である。その先にある無明の闇を作者は執拗に追っている。実はこれがやや観念論になっている。娯楽と文芸の二兎を追ったところで果たして成功といえるかどうか。
2002/06/15

参考 『龍の契り』
東洋の富の一大拠点・香港。その返還を前に、永い眠りから覚醒するかのように突如浮上した、返還に関する謎の密約。いつ、誰が締結し、誰を利するものなのか―。全焼したロンドンのスタジオから忽然と消えた機密文書をめぐる英・中・米・日の熾烈な争奪戦が、世紀末の北京でついにクライマックスを迎えるとき、いにしえの密約文書は果たして誰の手に落ち、何を開示するのか。

参考 『鷲の驕り』
「発明家クレイソンを調査してほしい」在米のコンピュータ・セキュリティの専門家笹生勁史に、通産省から極秘依頼があった。クレイソンは日本企業に訴訟を起こし、巨万の富を得ているという。問題は、米国の「特許法」の特異性にあった。先端技術の特許を牛耳る米国に、日本、そして正体不明の産業スパイ、マフィア、ハッカーが暗躍、手に汗握る国際サスペンス巨編。

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