北方謙三『水滸伝』第十七巻「朱雀の章」 (再掲)

画像
腐敗混濁の世を正す、「替天行道」の旗の下に結集した叛乱軍梁山泊。ついに宋国は梁山泊の完全殲滅を宣言した。十六巻までに108人からなる梁山泊の同志たちの33人が死んでいる。そしてこの巻では大幹部二人を含めた11人の命が失われる。

1 禁軍・最強の統帥童貫が直接采配をふるって、梁山泊へ総攻撃が始まった。
この双方大消耗戦の帰趨は?

2 梁山泊にとって必勝の期待はすでに潰えている。一方、軍事攻防と同時に北宋皇帝側近との政治的駆け引き・講和工作が進んでいる。
虚虚実実の、講和工作の真の狙いは?

3 梁山泊側も闘争は戦のための戦に退行、反乱の本来の大義は風化しつつあるように見える。
「替天行道」の夢の行方は?

この章では三点がポイントとなる構図にある。

このあたりを『原典水滸伝』で振り返ってみよう。
もともと梁山泊徒党は暴力的に財貨を奪取する強盗集団なのです。頭領の宋江は梁山泊を強力な軍団に育て上げ、朝廷に高く売り込み、官軍に組み込んでもらい、上等の官位を授かりたいだけのきわめて泥臭い俗物なのでした。「替天行道」も世のため人のためという高次元の思想じゃない。皇帝陛下への「忠義」の道なんですね。
朝廷は勅使をもって梁山泊を招命しようとなんども働きかけをします。つまり今までの罪はご破算にして高い官位を与えるから味方になってくれとの依頼です。宋江と一部の幹部は勿論この誘いに乗ろうとするが反対派もいてごちゃごちゃしている間にも戦火は拡大します。
さらに、108人はすべて存命していまして、童貫軍も高キュウ軍もことごとくやっつけてしまう。
そして宋江側から招命に応ずる工作がうまく運んで、めでたく108人揃って官軍入りをする、これが『原典水滸伝』
最後は朝廷にいいようにこきつかわれ、宋江をはじめとしてほぼ全員が死んでいくのですからカッコイイお話しではない。

さて肝心の『北方水滸伝』だが、もともとそうしないところから書き始めたはずです。ならば、首領・宋江はこの混乱をどのようにおさめるのか、そろそろ読者に対して見通しを示さないと『原典水滸伝』と同じくこの大長編小説も竜頭蛇尾に落ち込むぞとイライラしてきました。

ところが、さすが北方謙三。
ラスト近く、ストーリーはジワリと新展開をのぞかせるのだ。
 


この物語の当初から登場し、戦闘には加わることなく、全国を巡り、体制打倒「替天行道」の思想を説き続けてきた男がいる。放浪の僧・魯達、かつて魯智深と名乗った豪傑。
彼もまた枯れ木が朽ちるごとくに、子午山奥深くの庵で病床に臥せっていた………。そして………。

終章へ向けて、
新たな息吹の萌えあがる予感が
いやがうえにも高まる。
こここそ、「朱雀の章」の読みどころだ。


にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック

  • 北方謙三『水滸伝』十七「朱雀の章」

    Excerpt: 承前  この十七巻もあっけなく読み終わった。これほどの長編になると、Muも心眼で読んでいるのかも知れない。あれよあれよという間に最終頁になってしまった。  エピ Weblog: MuBlog racked: 2005-08-24 09:42