スティーヴン・ハンター 『悪徳の都』 壮絶な銃撃戦を楽しむ

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最近、ぜひ読みたいと惹かれる新刊が出てこない。
そうなると通勤電車で退屈をもてあますことになる。なにせ乗車時間片道1時間半なのだ。ひとそれぞれだが時間つぶしには最適なジャンルがある。いまさら携帯電話のゲームに夢中になる厚かましさはない。ゲームなら小説のゲーム。私にとってのそれは理屈抜きでスピード感を味わえる冒険活劇小説である。1999年から2000年にかけてスティーヴン・ハンターの『ブラックライト』『極大射程』『狩りのとき』『魔弾』。当時刊行するたびにベストセラーになったボブ・スワッガーシリーズがあって私も続けざまに楽しませていただいた。いずれも記憶に残る魅力的な作品である。シリーズものにつきもののマンネリ化で、度重なればいい加減にうんざりするのもでてくる。2001年、そんなタイミングで買って未読のままにあった『悪徳の都』を本棚の奥から引っ張り出してきた。
1946年、酒浸りの日々を送っていた元海兵隊先任曹長アール・スワッガー(ボブ・スワッガーの父)硫黄島の戦功により名誉勲章を授与された
戦功の勲章というのは大量の殺人者が受賞するものだ。彼はさんざ狂的なジャップを殺しまくったということ。戦争が生きがいの男にとって平和は耐え切れず、かといって世捨て人にもなりきれず悶々としていたということである。このあたりはシルベスタ・スタローンのランボー的人格そのままである。
ガーランド郡検察官ベーカーと伝説的英雄である元FBIエージェントのパーカーはギャングが牛耳る歓楽の町ホットスプリングズの浄化をもくろみ、摘発部隊の編成を計画。彼らはその隊員たちを軍隊並みに鍛え上げる役をアールに依頼してきたのだった。
妊娠中の奥さんの懇願もなんのその、待ってましたと、アールはこの任務に没頭する。優秀だが実戦経験のない若者たちの前で目の覚めるガンプレイを披露するあたりから物語は疾走しはじめる。
陰の帝王オウニー・マドックスはこの摘発部隊の急襲を受け大打撃を被る。彼は怒りに燃え凄腕の武装強盗団一味を呼び寄せ復讐戦を挑んだ。両者、知略、謀略の限りを尽くしての銃撃戦が展開される。
警察の摘発行為ではなく、これは部隊同士の戦争行為である。なにしろ実力伯仲なのだから両者の知略、謀略と凄まじい戦闘行為が見せ場である。殺る前に殺るである。銃器所有礼賛がアメリカ世論の多数を占めるというから著者はそれを助長する立場であろう。重火器の仕様に詳しくない私であるがその筋のマニアなら垂涎のディテールにワクワクするだろう。

悪い奴は強くなければならない。善玉ヒーローは絶体絶命に陥らねばならない。これが冒険活劇の鉄則である。
そしてアールの部隊は敵の奸計にはまり全滅する。新鋭の武器を奪われ満身創痍で孤立したアールはただ一人で重装備の敵に最後の戦いを挑むのである。

理屈を言えばいろいろあるでしょう。たとえばいかにもアメリカンヒーローでその鼻持ちならぬ悪臭はプンプンしている。

だが当初の読書目的にはピッタリの作品であった。

ただし先に述べたシリーズの中では出来がよくない部類だから、これから読まれる方には『ブラックライト』『極大射程』『狩りのとき』をお勧めします。

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