テーマ:直木賞

黒川博行 『破門』 チンピラ二人組がボケ、ツッコミの凸凹漫才 気のきいたコンゲームかと思っていたら 

黒川博行の『悪果』は傑作だった。その黒川が直木賞ということで手に取った次第。映画製作への出資金を持ち逃げされたヤクザの桑原と建設コンサルタントの二宮。失踪した詐欺師を追い、邪魔なゴロツキふたりを病院送りにした桑原だったが、なんと相手は本家筋の構成員だった。組同士の込み合いに発展した修羅場で、ついに桑原も進退窮まり、生き残りをかけた大勝負…
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山本兼一 『利休にたずねよ』 茶聖・利休の生臭さを堪能しよう

山本兼一の『いっしん虎徹』では、一振りの刀に命をかけた刀工が著者に乗り移ったかのような凄まじい筆力に圧倒された。ところが直木賞受賞作の『利休にたずねよ』は茶道=地味な文化との先入観があって面白くなさそう………と、ずっと敬遠していた。余計なことだが最近の小説は文庫本の場合、映画化されると表紙カバーが主役のスチル写真に変っていて、手に取…
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朝井まかて 『恋歌』 沸騰する幕末、天狗党の乱に巻き込まれた女性の数奇な運命 傑作の時代歴史小説

朝井まかて。初めて手にする作家です。『恋歌』が単なる時代恋愛小説であれば読む気にはならなかったが、茨城生まれとしては水戸天狗党を背景にしているところで興味が湧いた。 尊皇攘夷の純粋理論を実践しようとして、尊皇攘夷の虚構に敗れた水戸の武士たちである。いま放映中の会津『八重の桜』に重なるところもある。ところが水戸の場合は同士討ちで人材…
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桜木紫乃 『ホテルローヤル』 著者らしい切り口で現代の風俗を語る直木賞にふさわしい作品だった

桜木紫乃が直木賞を受賞した。いくつかの作品を読んでいたものだから、期待していたこともあり、早速手にした次第。『起終点駅 ターミナル』がそうだったが、短編集の構成には特に工夫を凝らしている作家で、本著もその工夫が充分に活きている作品だった。 > 湿原を背に建つ北国のラブホテル。「非日常」を求めて、男と女の扉は開く第一話ではこのラブ…
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安部龍太郎 『等伯 下』  天下一を目指した男のあらぶる魂が救済をうるまでの波乱万丈

信長、秀吉が天下をとったころ、安土桃山文化である。城郭は単なる軍事施設ではなく、覇者の富と権勢の象徴となった。雄大、壮麗な城郭を装飾する絵画は豪壮にして華麗なものとなり、金碧障壁画が盛んに行われる。その第一人者が狩野永徳であった。下巻は狩野永徳一門と信春(等伯)の命をかける抗争が縦軸になって展開する。 聚楽第のふすま絵を請け負…
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安部龍太郎 『等伯 上』 能登の片田舎、一人の絵仏師が天下一の絵師をめざして上洛する

長谷川信春、後の等伯(1539~1610)。実父は能登七尾の畠山家の家臣。染色業長谷川宗清の養子となり絵筆の技は養父に習った。長谷川家は法華宗で能登における菩提寺は本延寺。法華関係の仏画、肖像画などを多く手がけた。 20代ですでに絵仏師としても水墨画家としても一地方絵師の限界を超える力量を見せていたのだが、さらに狩野永徳を超える天下…
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辻村深月 『鍵のない夢を見る』 直木賞受賞のキイはタイトルにあるのではなかろうか?

今まで読んだことのない著者でしたが、多分若い人になじむ作風なのでしょう、すでにいくつもの作品がベストセラーになっています。今回、直木賞を受賞しました。オジイサンとしては年甲斐もなく、お祭り騒ぎに加わる野次馬となって、手に取ってみたのです。著者が千葉大学の卒業生という点にも興味がありました。 「仁志野町の泥棒」「石蕗南地区の放火…
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葉室麟 『蜩ノ記』 現代に通ずる男の生き様 その美学に陶然とする

遠望すれば春霞の山々に桜の花びらが舞い、近くは谷川のせせらぎ、カワセミの飛翔、清浄な山間の風景に礫をもつ少年が姿を現す。 久々の葉室麟であるが、期待たがわず、この美しい冒頭の情景から引き込まれた。 あと三年の後に切腹を命じられている男の至誠を貫く暮らしぶりを象徴して、幕開けにふさわしく、静穏の中に緊張感が漂っている。 読み終え…
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池井戸潤 『下町ロケット』 先端の企業間競争にほろりとする人情ドラマを調和させた直木賞受賞作

元三菱銀行のサラリーマンだった著者の『空飛ぶタイヤ』『鉄の骨』を読んで、その人柄に好感を持っていた私はこの作品が今回の直木賞を受賞したと聞いて素直によかったなぁと思いました。 「企業小説」というジャンルは元銀行員とか元役人とかあるいは経済評論家という人たちが書くことが多いのですが、たいがいはノンフィクション仕立てで内幕暴露の一点に…
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木内昇 『漂砂のうたう』 「自由」という虚構に踊らされる人々

漂砂? なじみのない言葉だ。スーパー大辞林によれば「波浪・潮流などによって流動する土砂。また、その移動する現象。河口・港湾などを埋積したり海岸を浸食したりする。」とある。 「漂砂のうたう」? 流れのままに動かされるだけのちっぽけな存在が索漠たる思いを抱えて人生をやり過ごしている………とも思えるが。それだけではなく、ちっぽけな存在であ…
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佐々木譲 『廃墟に乞う』 何かと話題を呼んだ直木賞受賞作だが………

このところ北海道警察の組織体質を相当手厳しく告発する警察小説を発表してきた佐々木譲の直木賞受賞作である。道警本部に勤務する警察捜査官が事件解決の主役なのだが、『廃墟に乞う』はこれまでの佐々木譲の作品からは一風変わった印象をうける連作短編集だった。 仙道孝司はある事件の捜査中に受けたショックによる抑鬱性感情不安定で休職を命じられ…
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三浦しをん 『まほろ駅前多田便利軒』 著者の父上とおしゃべりして………

まほろ市。東京都下南西部にある最大の住宅地、神奈川県と川を隔てて隣接している。いかにもモデルがありそうなのだが………、どこか現実離れをして蜃気楼のようにもやもやと歪んだところのある著者が作り出した空間である。ちょっと町の外に出れば農家があるのだが、市内は歓楽街、電気街、書店街、学生街があってスーパー、デパート、商店街、映画館、そして…
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桜庭一樹 『私の男』 直木賞候補作となっているがはたして………。

桜庭一樹の作品を読むのはこれが二作目だ。つい最近読んだ『赤朽葉家の伝説』はミステリーとしての評価が高く、本著は文芸作品としての評価が高い。逆じゃぁないのかな。「朽ちていく幸福と不幸を描く、衝撃の問題作!」この宣伝文句にとらわれないほうがいい。謎解きミステリーとして読むほうが不快にならずに楽しめる。 「俺の女だ!」これはよく…
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直木賞作家、坂東眞砂子のちょっとしたスキャンダル

坂東眞砂子の作品を初めて読んだのは『狗神』だった。日本に古くから伝わる憑物伝承を正確に消化し現代の農村に甦らせたホラー小説の傑作だった。その後『死国』と『山妣』を読んでいる。『山妣』は直木賞を受賞した、大自然の凄愴の美と人間界の極彩色の地獄図を描いた記憶に残る作品だった。 その坂東真砂子についてちょっとだけセンセーショナル…
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直木賞受賞作 朱川湊人 『花まんま』 どうしてこれだけ懐かしく思えるのだろう

僕にも「こういう」少年の時があったんだ。六つの短編にはいずれもどこかに既視感を覚えるような懐かしいところがあった。それは怪異現象そのものの体験ではないのだけれど、子供がうけとめる不思議現象というフィルターを通して語られる懐古談に、事実としての記憶はますますぼんやりしてしまうのだが、むしろ感性だけは浄化されて、登場する少年少女とおなじ…
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ヴィクトル・スタルヒンですか 辻原登『枯葉の中…」に寄せて

「ヴィクトル・スタルヒン ― 辻原登『枯葉の中の青い炎』について」について スタルヒンとシャーマニズムですか。スタルヒンには伝説的なところが備わっているのですね。 旭川にスタルヒン球場があります。 銅像が建っていて台座にはおよそこのように説明されています。 スタルヒン像建立に寄せて スタルヒンは、一九一六年ロシアに生れ、幼…
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感動の直木賞 熊谷達也 『邂逅の森』 自然の摂理に導かれた生き様を貫く男への讃歌

ある民族にとって自然は過酷であった。そこでは人間に絶対服従を課したのが神であった。しかし、日本民族にとって自然は生きとし生けるものに恵みを与える神である 大いなる自然の道理に導かれている存在。山、森、谷、川、そのものがそうであり、そこで息づいている草木や熊、カモシカ、ウサギなどの獣がそうだ。それらは自然の恵みをあるがままに受け入れ…
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藤原伊織『テロリストのパラソル』忘れがたいこの名作をいま再読する

空には轟音をたてて旋回するヘリコプター。屋上から降りそそぐ火焔ビン、投石。粉塵や地上からの催涙ガスと放水で周囲は白煙にけぶっていた。 1969年東大安田講堂。 会社に入ってようやく3年がたとうとする頃だった。 「ここまでいっちまったのか」 と市街戦さながらのテレビ映像をくいいるように見ていた。 1995年、この作品を読…
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西木正明 『凍れる瞳』 ここに書かれた昭和を生きた人たちに素直に共感できた。

初めて読んだ西木正明。昭和15年秋田生まれ。私より4歳年上とはいえ同世代だ。昭和63年に直木賞を受賞したのが48歳であったから文壇デビューとしては遅いほうだろう。手元にある昭和63年受賞の直前に発刊の『凍れる瞳』の「あとがき」で氏は 大多数の人間にとって、人生は挫折の連続だと思うし、それが人生だとも思う。しかし、………。人生の翳の…
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04/02/05京極夏彦「巷説百物語シリーズ」その2 『後巷説百物語』

『巷説百物語』『続巷説百物語』と続きましたこのシリーズもこれが最後となりますと後ろ髪ひかれる思いがいたします。御維新の10年と時代が変わりました。小股潜りの又市、山猫廻しのおぎん、事触れの治平といった一癖も二癖もある小悪党が好事家山岡百介を狂言回しとして江戸市中ならず全国をめぐり妖怪変化が引起したとしか考えられない怪事件を鮮やかに解…
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04/02/01 京極夏彦「巷説百物語シリーズ」 その1

先般の直木賞をこの『後巷説百物語』が受賞しましたので積読状態にありました『続巷説百物語』とあわせて読んでみました。このシリーズは最初の『巷説百物語』がとても楽しい読み物だったのです。 時は江戸。 安部晴明の子孫か、ひと癖、ふた癖あるワルたちが不可能事件をたたっきるお話。 ホラーではなく本格推理小説であります。 京極夏彦「…
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「「柔らかな頬」 桐野夏生」について 桐野夏生の作品に見る女性像

普@「柔らかな頬」 桐野夏生」について 私も桐野夏生の作品を初めて読んだのが「顔に降りかかる雨」でした。女性版ハードボイルドといった印象でそれまでにはなかったタッチで女性を描く作家だと思いました。「柔らかな頬」で一層その感を強めました。 夫婦の関係、男女の関係については全く対等に男を見つめる、そして「日常」からの逃避あるいは飛翔、孤…
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03/04/05 横山秀夫『半落ち』はなぜ直木賞を受賞できなかったかー2

『半落ち』とこの『動機』を読んで、さらに『半落ち』が直木賞を受賞できなかったことを思い合わせて、横山秀夫のこれまでの作風で気がついたことがあります。 第一に推理小説ではあるものの単なる謎解きパズルをこえて人間の心理や物語性、社会・風俗に重点を置いています。また作者は明らかに読者にうったえる社会性のあるテーマを用意しています。そ…
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03/04/05 横山秀夫『半落ち』はなぜ直木賞を受賞できなかったのかー1

横山秀夫の作品は『半落ち』を最初に読んだだけでしたので日本推理作家協会賞受賞の『動機』を読んで、その作風にある共通の個性的魅力が感じられました。 署内で一括保管した警察手帳が紛失、スキャンダルに発展する恐れある事件が発生し、内部犯行の疑惑が濃くなる表題作「動機」。 女子高生殺人の前科を持つ男が殺人を依頼される「逆転の夏」。 …
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03/02/23高村薫の直木賞『マークスの山』 その4「その後」

その後、高村はミステリー最後の最高傑作、犯罪兼企業小説『レディ・ジョーカー』を発表する。 ここでは事件に巻き込まれた大企業の経営者たちの真剣な対応姿勢が実にリアルな筆致で描かれていることに驚かされた。 次の作品、非ミステリー大作『晴子情歌』では「原理」に懐旧の情を持つ女性主人公が昭和の姿を見つめている。 失われた10年で失…
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03/02/23 高村薫の直木賞『マークスの山』 その3「誰がバブルを告発できるか?」

日本の権力構造をとらえる高村薫の視点に関することである。 初稿を読んでもう10年近くもたつのかと、私自身この間の時の経過、その凝縮された濃度を実感する。 バブルという魔物に日本の全体構造は窒息状態に追いやられた。 その魔物の周囲で数多い不正義があった。 私の友人・知人の幾人かはその責めを問われ被告席に立たされた。 経済的制裁、…
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03/02/23 高村薫の直木賞『マークスの山』 その2「10年後の印象」

実は1993年に初稿版を読んだときには直木賞受賞とはいえ、退屈だった記憶を除いて印象が薄い作品であった。 『黄金を抱いて翔べ』『神の火』『リヴィエラを撃て』 著者のこれまでの作品である一連の大型犯罪小説、国際謀略小説の規模と娯楽性に比較して萎縮した作品だと錯覚したこともあったのだろう。 「警察小説」ならば大沢在昌『新宿…
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03/02/23 高村薫の直木賞 『マークスの山』 その1

このほど改訂版が発刊された。 帯には「警察小説の金字塔」とある。まさに文字通りの傑作である。 マークスと名乗る二重人格の青年の狂気と仲間の秘密を共有しあった政・財・官・法曹界のエリートたちの狂気、二つの狂気が交錯する暗闘に警察組織が翻弄される。ほとんど手がかりがないまま進行する連続殺人事件の真相を追う合田刑事たちの地道な捜査活動…
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「邂逅の森」について

「邂逅の森」について 大いなる自然の道理に導かれている存在。山、森、谷、川、そのものがそうであり、そこで息づいている草木や熊、カモシカ、ウサギなどの獣がそうだ。それらは自然の恵みをあるがままに受け入れる。しかし一方で自然の過酷な試練にさらされ、しかも生きつづけることもまた道理なのである。 人間はそうではなかった。人間は常に自然を征…
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