テーマ:海外ミステリー

フェルディナント・フォン・シーラッハ 『禁忌 TABU』  もやもやの核心をどうとらえるべきか?

飾り帯の宣伝文句には「ラストに明かされる衝撃の結末」とあり、前作の『犯罪』がとても魅力的な犯罪小説であったため期待をして手に取った。いくつかの出版社が企画した昨年度傑作ミステリーの上位にランクされている。 取りつく島のないもやもやの核心を読者としてはどうとらえたらよいのか?魅力的な文体に迷走させられながら、ゼバスティアン・フォン・エッ…
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ジェフリー・ディーヴァー 『スキン・コレクター』  ベストセラーを創り出す人々の驕りか?

ところで「毒の針で刺青を刻むスキン・コレクター。すぐには殺さない。」だそうだが、「タトゥー」についての薀蓄に相当部分紙数を割いている。珍奇なピアス同様、ファッションの一種になりあがっている。一般的にはタトゥーパーラーと呼ばれる店舗でタトゥーアーティストがタトゥーマシン(タトゥーガンというヤクザな言葉は使ってはいけないのだそうだ。)で創り…
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ピエール・ルメートル 『悲しみのイレーヌ』 話題のベストセラーを暇に任せて読んでみましたが………

この年末、正月は特別休養をとってのんびりです。久しぶりに読書の時間ができました。 このところ連日、テレビのニュースワイドショーで怪しげに報道されている大阪門真市のバラバラ事件だがなんとも凄惨な死体損壊が行われたようだ。犯人はあらかじめのこぎりや包丁、小型冷凍庫を購入し、被害者をバラバラに切断、恐ろしいことに頭部を短時日で頭蓋にしたので…
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ピエール・ルメートル 『その女アレックス』 昨年の話題を独占した海外ミステリーだが

誘拐されたアレックスは手足を縛られ、前こごみの姿勢のまま身動きの取れない狭い木箱に閉じ込められる。誘拐犯はお前が死ぬのは見たいと言って彼女がネズミに食われて死ぬのを待っている。10日以上もそんな状態が続けば、普通の人間なら気が狂って死んでしまうところだが、アレックスは死を目前に脱走を試みる………。 凄まじくサディスティックな犯人像…
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ケイト・モートン 『秘密 下』 やはりそうだったかと思わせつつ結局は騙されます 見事な叙述マジック

最近はウォーキング、カメラと写真の編集からパソコン操作に余暇時間の大半を割いている。通勤時間がまるで無くなったことも加わって読書時間が激減だ。本一冊をひと月もかけていては内容を消化することなどおぼつかない。 ミステリーの場合はなおさらである。一気に読めないと消化不良を起こす。やむを得ず『秘密』はなんどもページをめくり返し、あるいは上巻…
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ケイト・モートン 『秘密 上』 過去と現在が綾をなしてすすむ語りの妙に陶然とする

お伽噺というソフトカプセルに閉じ込めた劇薬ホラーとの印象を受けた『忘れられた花園』のケイト・モートン、久々の登場。まだ上巻を読んだだけであるが、乙女にありがちな同性愛と若い男女の恋が並行する甘酸っぱい青春恋愛小説。上流社会と下層市民の落差を織り込んだいかにも英国風風俗小説。現代から見れば古めかしいストーリー。しかもスローテンポなのだ…
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NHK連続テレビドラマ 『ロング・グッドバイ』を観た。雰囲気が出ているぞ!

なにげなくチャンネルを入れた。「ロング・グッドバイ」だって?まさかレイモンド・チャンドラーのアレをリメイクしたのではあるまい。………と一瞬疑った。本格中の本格なのだからこのハードボイルドは、日本の茶の間の夕飯時には受けるはずがないと思っている。なんてったって、男の噺であり、セリフがバタ臭くてあまりにもキザだから、母親族には受ける…
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追悼 ガルシア=マルケス 『百年の孤独』 17日、コロンビアのノーベル賞作家が亡くなった

1967年発表の長編『百年の孤独』は、架空の都市・マコンドを舞台にした開拓者一族の百年の歴史を夢幻のごとく描いて、マジックリアリズムの傑作とされた。ノーベル賞作家だから、難解であるとの先入観から敬遠していた作品だったが、チャレンジ精神とヤジウマ根性で2011年6月に読んでみた。その時の印象であるが…… 大作家の死を悼んで、再掲します。…
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ミネット・ウォルターズ 『遮断地区』  2001年7月28日英国でこんな凄惨な暴動があった?

ミネット・ウォルターズの作品は1999年に『女彫刻家』『昏い家』、2012年『破壊者』を読んでいる。実を言うといずれもわたしには理解できないところがあって、ぼんやりとしか記憶に残っていない。ところが日本ではかなり人気のあるミステリー作家なのだ。この『遮断地区』も昨年の各種人気投票で上位にランクインしている。「このミステリが読みたい!…
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スティーヴン・ハンター 『第三の銃弾』 あの伝説の狙撃手がJFK暗殺事件の謎に肉薄したが………

1999年から2000年の頃、スティーヴン・ハンターの『ブラック・ライト』『極大射程』『狩りのとき』と絶頂期のスワガーシリーズに夢中になった。ジェイムズ・メイヤーの『地上50ミリメートルの迎撃』という先行した傑作もあって、スナイパー冒険小説は花盛りといったところだった。派手なアクション、意表を突く展開、スリリングでスピード感あり。ズバリ…
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ダシール・ハメット 『血の収穫』 「ミステリーに革命をもたらしたハードボイルドの先駆的名作」

聞きかじりで恐縮だが、20世紀初頭のアメリカにパルプ・マガジンというのがあった。粗悪なザラ紙でけばけばしい表紙のついた通俗読み物雑誌、なかでも「ブラック・マスク」誌はいわゆるハードボイルド小説を開花させる土壌となっていた。その雑誌でハメットの『血の収穫』は1927年から一年間連載され、1929年の出版で大反響を呼んだ。なにしろハードボイ…
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スティーヴ・ハミルトン 『解錠師』   金庫破りの緊迫したシーンが見せ場になっている

「非情な犯罪の世界に生きる少年の光と影を描いてMWA賞最優秀賞、CWA賞スティールダガー賞など世界のミステリ賞を獲得した話題作」 しかも昨年の「このミス」「週刊文春」の第一位であったから、最近はこういうランキングはあてにならないとわかっていても、暇に任せて手に取った。 主人公の「ぼく」・マイクルは1982年生まれ。18歳で逮捕…
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デニス・ルへイン 『夜に生きる』 凄惨な暴力を哀しく描いた実録風ギャングストーリー

アイルランド移民といえば当時は下層階級であるが、トマス・コグリンはボストン市警できわどい捜査活動も含めて警部にまでのし上がり、かなり裕福な家庭を築いた例外的な移民一世である。2008年に読んだ『運命の日』はその長男・ダニーを主人公に、アメリカの存在そのものにある矛盾を直接に語った社会史劇的な物語だった。そして最新作の『夜に生きる』は…
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ジョン・ル・カレ 『われらが背きし者』 すべてはこのエンディングのための序章であったのか

ジョン・ル・カレのスパイ小説の感想で、あらすじに触れるのはタブーなんだ………と、『ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ』をじっくり読んで、そしてこの作品を読んだところで確信しました。 それは冒頭から読者を煙に巻く。 しかも上品に巧みに。 だから煙に巻かれること自体を楽しむ。 そういう仕掛けになっているからです。 ペ…
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レイモンド・チャンドラー/村上春樹訳 『大いなる眠り』 シリーズ初作にしてひたすら描くマーロウの魅力

私立探偵フィリップ・マーロウ。三十三歳。独身。ロサンゼルス地方検事局の元捜査員。一部屋半のオフィスをダウンタウンに構え、命令への不服従にはいささか実績のある男………。 チャンドラーを読んでいる読書人ならおそらくだれもが知っている有名なセリフ。女がマーロウに尋ねる。 「あなたのようにしっかりした男がどうしてそんなに優しくなれるの?…
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トルーマン・カポーティ 『冷血』 高村薫最新作『冷血』を読む前に

トルーマン・カポーティの『冷血』は1965年の作品である。1959年11月、カンザス州の片田舎・ホルカムで起きたクラッター一家4人(夫妻と子どもたち)惨殺事件。実際にあった事件を徹底的に調べ上げ、ノート6000ページに及ぶ膨大な資料をもとに、データを再構築し、実際の再現に迫ろうとする姿勢で、実録風の小説に纏め上げたものだ。被害者は皆…
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ジェフリー・ディーヴァー 『バーニング・ワイヤー』 おなじみリンカーン・ライム 今回の趣向を楽しみに

ジェフリー・ディーヴァーのお家芸だ。 そして本著はリンカーン・ライムシリーズの第9作にあたるそうだ。 ところでわたしはJ・ディーヴァーをどれだけ読んでいただろう? 1999年1月   ボーン.コレクター  ※ 2000年3月   静寂の叫び 2000年9月   悪魔の涙 200年10月   コフィン.ダンサー  …
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スコット・トゥロー 『無罪』 法曹のプロたちがしのぎを削る完璧なリーガルサスペンス

1988年に刊行された『推定無罪』の続編である。 と言っても、わたしは『推定無罪』を読んでいない。ハリソンフォード主演の映画は見ているが、実はこの記憶も定かでない。ただ、「推定無罪」という言葉に当時は奇妙な語感を覚えたが、このときしっかりと意味を認識したものだ。被害者の体内にあった精液の血液型がハリソンフォード演ずる主人公のサビッ…
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アーナルデュル・インドリダソン 『湿地』  アイスランドの成り立ちに隠された事件の深層とは?

北欧ミステリーがブームだという。このところスティーグ・ラーソン 『ミレニアム』、ヨハン・テオリン『黄昏に眠る秋』とスウェーデンのミステリーを楽しませてもらったが、今回はアイスランドである。アイスランドといえば、2~3年前に火山の噴火で国際航空線が大混乱したことぐらいしか知らない。「国」というよりも、火山と氷河、寒々とした不毛の「島」…
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カルロス・ルイス・サフォン 『天使のゲーム』 20世紀初頭、呪われたバルセロナを語る第一級のエンタメ

2007年に読んだ前作 『風の影』のバルセロナは1945年だった。嫉妬、憎悪、不信、裏切り、暴力のなかで、人々の善意、友情、愛の絆のたくましさを、繊細、流麗な文体で高らかに歌い上げていた。特にスペイン文芸文化の光と影を象徴するかのように人知れず浮かび上がる「忘れられた本の墓場」は強烈な印象を残した。「忘れられた本の墓場」シリーズとな…
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ジョン・ル・カレ 『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』 なるほどこれが本格スパイ小説だ!!!

このところ続けざまに女性作家の作品を読んできたところで、今度は男の匂いがプンプンするような小説でギュッと緊張したくなった。ル・カレのスパイ小説はかなり前に『寒い国から帰ったスパイ』を読んだという記憶だけがある。代表作といわれている「スマイリー三部作」のうち、最近になって『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』の新訳が出たと聞き、…
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ドン・ウィンズロウ 『サトリ』 劇画風に描いた日本精神をもつ暗殺者の活劇

初めて読んだドン・ウィンズロウの作品『犬の力』は凄かった。マリオ・プーゾとエル・ロイ。マフィアと国家権力のノワールを合わせてアメリカが仕掛ける麻薬戦争のスケールに圧倒された。次に読んだ 『フランキー・マシーンの冬』もなかなか洒落ていた。すべてに一流のスタイリッシュな老殺し屋のアクション活劇なのだが、かつての東映任侠シリーズに通じ…
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ミネット・ウォルターズ 『破壊者』 ショッキングなキャッチフレーズに惑わされないように………

ミネット・ウォルターズについては、ストーリーはまるで記憶にないのだが、日本でもブームになって、1999年ごろに遅ればせながら『女彫刻家』(1993年)と『昏い部屋』(1995年)を読んだことがある。今回、久しぶりに目にした著者名で英国ミステリ女王とされていた。これは新作だと思い、どんなミステリー作家だったかと、懐かしさも手伝って手に…
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デイヴィッド・ゴードン 『二流小説家』 アメリカの狂気,ゾッとする現実を見せつけるが………

昨年の『このミステリーがすごい!』『週刊文春ミステリーベスト10』など海外部門ランキング第1位に挙げられた話題のミステリーだ。この手のランキングは国内部門ではどうかと思うものも多いが海外部門は比較的妥当なところがあり、それでは読んでみる価値があるかもしれないと手に取ったしだい。 タイトルは「二流小説家」とあるが、原題は『The S…
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デビッド・フィッシャー 『スエズ運河を消せ トリックで戦った男たち』 第二次大戦のビックリ秘話

著者は米国のノンフィクション作家であり、これは実話を小説風に描いたものだ。どこまでが本当も話なのかわからないのがマジックなのかもしれない。 私はあまりノンフィクション系を読まないのだが、この本の書評が新聞2紙に紹介されていたのが目に付いた、第二次大戦の北アフリカを舞台に本物のマジシャンがマジックの手法でドイツ軍を翻弄する。日本にも…
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ジェフリー・ディーヴァー 『007 白紙委任状』 リンカーン・ライムの捜査手法でボンドが凶悪犯に迫る

僕は大学生だったが、『007は殺しの番号』を家庭教師先の坊やと渋谷の東急文化会館で観たときの、これまでの映画にはなかった新鮮なインパクトを忘れられない。あのダンディズムとセクシャルな美女とのからみ、大仕掛けで荒唐無稽な大陰謀と闘うハードなバイオレンスに魅せられて以来、ボンド映画とはつきあいは長い。 フレミングの原作は『ムーンレイカー』…
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トム・ロブ・スミス 『エージェント6』 三部作完結。悲惨に打ちひしがれたレオに救いの道はあるのか?

『チャイルド44』。1953年、スターリン統治下のソ連。恐怖政治、監視国家、秘密警察、密告システムの残忍さを極限まで描き、犯罪者として烙印を押された主人公レオの国家相手の壮絶バトルアクション。とにかくあまりにもサディスティックな描写に度肝を抜かれた。 『グラーグ57』、1956年、フルシチョフ政権への移行期にあるソ連。政権…
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フェルディナント・フォン・シーラッハ 『犯罪』  異常な犯罪と向き合う弁護士が描く裁判制度の光と闇

弁護士の著者が現実の事件に材を得て、異様な罪を犯した人間たちの哀しさ、愛おしさを鮮やかに描く連作短編集。文学賞二冠、45万部突破の欧米読書界を震撼せしめた傑作一生を愛し続けると誓った妻を殺めた老医師。兄を救うため法廷中を騙そうとする犯罪者一家の息子。羊の目を恐れ、眼球をくり抜き続ける伯爵家の御曹司。彫像『棘を抜く少年』の棘に取り憑かれた…
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ヨハン・テオリン  『黄昏に眠る秋』 スウェーデン・エーランドの憂愁たっぷりの傑作ミステリー

スウェーデンのエーランド島。 地図を見れば、スカンジナビア半島を海龍に見立てたとき、デンマークを飲み込もうとする下あごの付け根にコバンザメのように張り付いて見える細長い島だ。現在、南部の農業地帯は世界遺産に指定されている。島の北部がこの物語の舞台になる。西に本島を眺望するいくつかの村落があるが定住人口は数少ない。ストックホルムの小…
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G・ガルシア・マルケス 『百年の孤独』  廃墟と化したマコンドは復活するだろうか。現在の日本を予言?

いつかは読みたい、むしろ読んでおかねばならないと思うような重量級作品はいくつかあるのだが、手ごわい!と怖気が先行し、なかなか手が出ない。これはそのひとつだった。 コロンビアのノーベル賞作家。ラテンアメリカ文学ブームの先駆け。 「20世紀後半の世界文学を物語の奔流で力強く牽引した」 といわれる作品だと、この程度の知識しかなかった…
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