テーマ:時代小説

五木寛之 『親鸞 完結編 下』 善いも悪いも脇役が断然魅力ある五木流親鸞物語

南都北嶺のカネと権威と暴力、そして鎌倉幕府、さらには朝廷と既存の体制の総力を結集し専修念仏を根絶やしにしようとする覚蓮坊の陰謀。この奸計から親鸞を守ろうと死力を尽くす謎の女・竜夫人。若き日の竜夫人と青年親鸞の深い因縁とは?竜夫人を支える葛山申麻呂の血筋は? そしてついに再登場するサディスト。十悪五虐と自らうそぶき「信仰心などないこんな…
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五木寛之 『親鸞 完結編 上』 親鸞の悩みはさておき脇役が大活躍する痛快時代小説を楽しみましょう

これまでの仏教は、国を守るもの、朝廷の安泰を祈るものであり、貴族や高家のためのものだった。そして浄土に行けるものはチカラやカネのある者だけだった。ところが法然、親鸞は貧しい人や世間から卑しめられてきた人びとのためにこそ仏教はある、これまで救われない罪深い身だとされていたものにこそ仏の道があると説く。身分や財力にかかわりなく南無阿弥陀仏と…
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山田風太郎 『幻燈辻馬車 下』 複雑骨折した元会津士族・干潟干兵衛の心境は?

 「危機に陥ったとき、お雛が呼ぶと現れる干兵衛の息子・蔵太郎と妻・お宵の幽霊。2人に助けられながら、干兵衛はいつしか自由党壮士と明治政府の暗闘に巻き込まれていた。お雛と平穏な生活を望みつつも、会津藩士だった頃の自分を自由党壮士の姿に重ねて心揺れ動く干兵衛。そんな中で<赤い盟約書>を巡って事態は急展開する!最後に干兵衛が選び取る運命とは……
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山田風太郎 『幻燈辻馬車 上』  かなりの知識レベルが要求される難解な「明治もの」

山田風太郎の「明治もの」第二作は「週刊新潮」に1975年(昭和50年)より連載された 本著『幻燈辻馬車』。 冒頭、第一話「車の音が消えるとき」は明治15年、福島県令三島通庸(みちつね)の屋敷で開かれた大宴会。招待客の一員である三遊亭円朝のお家芸「真景累ヶ淵」の語りを枕にして「怪談噺と申すは近来大きく廃れた、幽霊は神経病だとして、…
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山田風太郎 『警視庁草紙 下』 近代化という陣痛に苦悶する両者対決の行方は?

東京を騒がせる怪事件の影で、知略によって警視庁を出し抜いてきた元江戸南町奉行の一派。業を煮やした大警視・川路はとうとう直接対決に踏み切る。同じ頃各地では、反政府派の反乱により不穏な空気が漂っていた そんな中についに西郷蜂起す、との報が入る。その裏に隠されていた大からくりとは?そして近代化を巡る争いの帰趨とは………。華やかな明治に潜む闇…
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山田風太郎 『警視庁草紙 上』 「明治もの」の傑作を発見した喜び

山田風太郎といえばなんといっても「忍法帳」である。学生のころ「週刊新潮」に『くノ一忍法帳』や『外道忍法帳』が連載されていた。毎回忍者同士が奇想天外、抱腹絶倒のセックス忍法で死闘を繰り広げるのだ。なんて面白いのだろうと、その後忍法作品はほとんど読んでしまった。 だから水戸天狗党の乱をシリアスに描いた『魔群の通過』を読んだ時には、なんと本…
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皆川博子 『海賊女王 下』 同じ海賊女王でもエリザベスと違ってグローニャは孤独ではなかった

後には全世界の四分の一まで領土を拡張した大英帝国も、エリザベス一世治下のイングランドはまだ三流国だった。植民地を持っていなかった。植民地といえるような地域はせいぜいアイルランドぐらいであった。むしろフランス、スペインに圧倒されていた。エリザベス一世はそのイングランドの国家としての独立を確実にし、近代イギリスの基点を築いた女王といえる…
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皆川博子 『海賊女王 上』 まさに大冒険活劇の大衆小説 皆川氏のこの瑞々しいチャレンジ精神に脱帽

上下巻で1000ページをこえる長編小説である。 皆川博子氏、86歳とご高齢なのだが、この海洋冒険小説・海賊戦闘小説を文字通り血沸き肉踊るバイオレンス・アクション・サスペンス、まさに大娯楽作品に仕立て、さらに重厚な時代・歴史小説として完成させている………氏の筆力に驚嘆する。久々に出会った「理屈抜きに面白い」大衆小説だ。 『死の泉』の流…
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坂東眞砂子 『瓜子姫の艶文』  瓜子姫とは?おかげ参りとは?伝承・伝習に翻弄される女の生

坂東眞砂子氏は今年1月、出身地である高知県の病院で死去された。55歳、早すぎる他界が惜しまれます。 氏の作品を初めて読んだのは2001年、『狗神』。日本に古くから伝わる憑物伝承をしっかりと消化して、現代の農村に甦らせた怪奇パニック物語。近年流行した都市伝説型ホラーやSF的ホラーとは一線を画して、日本的な土着型ホラーというべき傑…
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火坂雅志 『軍師の門 下』 一筋縄ではいかぬ官兵衛という人間の解釈

「調略」あるいは「調略する」とは策略をめぐらせて敵を自滅に追い込む頭脳戦のようで、正々堂々の横綱相撲とは正反対の語感がある。しかし、兵力の差がそのまま戦争の勝敗を決めるのであれば歴史に驚きはないし、まして小説としてはできの悪いものになってしまうだろう。 秀吉はもともと調略戦を得意としていたものだが、有岡城から生還した官兵衛を重用す…
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火坂雅志 『軍師の門・上』  中国地方攻略の詳細をわたしはあまり知らなかった。

この3月にサラリーマンを退職して50日が過ぎるが、なにが変わったと言えば、片道2時間の通勤時間がなくなったため本を読む時間がとれなくなったことだ。その分、なにやかやと忙しくなったが……。 わたしの古くからの友人に「小寺さん」がいるが、姫路の出身だから、官兵衛の主筋にあたる血縁かもしれない。 「軍師」といえば頭に浮かぶのは諸葛…
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木内昇 『櫛挽道守』  幕末、木曽山中の宿場町、櫛職人の家族がそれぞれの思いに生きた感動の足跡

櫛挽の技の詳細が紹介されるが、口絵を用いた解説はないからはっきりとはイメージできないのだが、初めて知らされた世界だけに興味津々、俄然ひきつけられた。 舞台である藪原宿は中山道の宿場町である。現在は長野県木曽郡木祖村。ネット情報ではいまも特産品は「お六櫛」とされている。「くしひきちもり」、タイトルはあまり使われない言葉である。木製の…
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京極夏彦『書楼弔堂 破曉』  明治という時代の憑き物を落とす傑作の短編集 まさしく著者の新ジャンルだ

わたしは京極夏彦の作品をよく読んでいた。読んだ作品を整理するとこんな具合である。 ① 妖怪変化がもたらすかのような奇怪な事件を「京極堂」こと中禅寺秋彦が「この世には不思議な事など何もないのだよ」と見えを切って合理的に解決する推理小説シリーズ。 『姑獲鳥の夏』(1994年9月)、『魍魎の匣』(1995年1月)、『鉄鼠の檻』(1996年…
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朝井まかて 『恋歌』 沸騰する幕末、天狗党の乱に巻き込まれた女性の数奇な運命 傑作の時代歴史小説

朝井まかて。初めて手にする作家です。『恋歌』が単なる時代恋愛小説であれば読む気にはならなかったが、茨城生まれとしては水戸天狗党を背景にしているところで興味が湧いた。 尊皇攘夷の純粋理論を実践しようとして、尊皇攘夷の虚構に敗れた水戸の武士たちである。いま放映中の会津『八重の桜』に重なるところもある。ところが水戸の場合は同士討ちで人材…
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葉室麟 『蛍草』 軽快にすすむ娘の仇討、剣あり笑いと涙の恋愛人情噺でもあるのだが………

日経の書評欄で絶賛されていたのが記憶にあって、『蜩の記』以来、久しぶりの葉室麟だった。葉室麟は武士社会のしがらみから抜け切れない人物たちの織りなす文字通り命がけの恋あるいは忍ぶ恋など、峻烈の生き様に宿るぬくもりがじんわりとわたしら年代のものの胸に染み入る………大人の純愛を描いては数少ない名手でもある。 ただこの作品は 「『爽快…
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木内昇 『ある男』 明治維新とはなんであったのか?近代化の光が映し出す影絵の物語

明治維新とはなんであったか?当事者でないわたしらはなんらかの整理をしたうえで、あとづけの答えを出してみるのだが、そこに生きた人たちは整理する余裕などはなかったのだ。 分厚い農民層からなる社会を支配する核としての機構は「藩」であった。一般の人々からみれば一番えらいのはお殿様、一国一城の主であって、徳川家の将軍は眼前になかった。日…
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梶よう子 『ふくろう』 「千代田の刃傷事件」を素材に、武士社会の凄惨なイジメをリアルに描く

「イジメ」「殿中」「刃傷」「敵討」と揃えば「忠臣蔵」しか思い浮かばないものだから、 江戸時代後期の「千代田の刃傷事件」は全く知らず、このテーマだけでも読んだ価値がありました。 連日、報道されるように、学校でのイジメがあとを絶たない。自殺にまで追い込まれる。陰湿さはエスカレートし、肉体への暴力行為だけではない。無視蔑視、罵詈雑言・…
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梶よう子 『一朝の夢』 朝顔に託した男たちの夢とはなんだったのか?安政の大獄をバックに傑作の時代小説

いま仕事をしている国立大学の喫煙小屋に集う仲間の一人から借り受けたのがこれである。たまたま、安政の大獄に話が及び、わたしが推薦した時代小説は諸田玲子『奸婦にあらず』であったのだが、彼は梶よう子『一朝の夢』も井伊直弼の通説をひっくり返す作品だと言う。 初版2008年の松本清張賞受賞作であるが、全く知らない作品だった。ところが、新…
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夢枕獏 『大江戸釣客伝 上下』 若き日の英一蝶、宝井其角が破天荒に遊ぶ元禄の世界

夢枕獏といえばいつごろだったろうか、「魔獣狩りシリーズ」をおおいに楽しんで読んでいた時期があった。当時は菊地秀行の「魔界都市シリーズ」も発刊されるたびに読んだ。もうすこし前には平井和正「ウルフガイシリーズ」が面白かった。これらはSF的伝奇的素材を現代に持ち込んでバケモノ的な超能力者同士のバトルアクションに工夫を凝らした小説群で、山田…
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諸田玲子 『四十八人目の忠臣』 恋と忠義の狭間で揺れ動く女心

昨年のNHK大河ドラマ『江~姫たちの戦国~』。NHKらしく、現代という視線からその時代の女性を描いている。いつもながら女性が男どもを右往左往させる豪華絢爛のホームドラマであって、現代女性をそのまま戦国時代にタイムスリップさせたような珍妙さにはしばしば失笑を禁じえなかった。2009年に読んでいた諸田玲子の『美女いくさ』と比べたものだか…
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五木寛之 『親鸞 激動篇』 「鬼神を敬してこれを遠ざく」の親鸞。専修念仏の布教の前に立ちはだかる障壁

死後の世界など無頓着であり信仰に救済を求めるなどまったく考えられない私ですが、実際には大勢の人が神仏に祈りをこめる向き合い方をしている。科学万能の現代でなお科学者のなかには真理の究極に霊的存在を認める方がおられる。身の回りを見れば、私だって墓参もすれば葬儀もあるという具合に日本人の生活様式に深く組み込まれている。また政治や国家、民族…
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葉室麟 『蜩ノ記』 現代に通ずる男の生き様 その美学に陶然とする

遠望すれば春霞の山々に桜の花びらが舞い、近くは谷川のせせらぎ、カワセミの飛翔、清浄な山間の風景に礫をもつ少年が姿を現す。 久々の葉室麟であるが、期待たがわず、この美しい冒頭の情景から引き込まれた。 あと三年の後に切腹を命じられている男の至誠を貫く暮らしぶりを象徴して、幕開けにふさわしく、静穏の中に緊張感が漂っている。 読み終え…
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志水辰夫 『みのたけの春』 冒険小説の第一人者が円熟した筆で語る若者のいきかた

志水辰夫といえばハードボイルド・冒険小説界の第一人者だったのだが、このところ時代小説に転じたらしい。ダイナミックなこれまでのイメージとは異なって『みのたけの春』、相当に渋い。この作品を読んだあとで、1936年生まれと知ってびっくりした。私よりも8歳も年上のオジイチャンだったのだ。なるほど、「若者の生き方のひとつ」として、多分にアナク…
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隆慶一郎 『吉原御免状』 第一級の大衆娯楽小説を満喫する

未読のままにあった一時代前の傑作を読むというのはいつもと違う高揚感があるものだ。物語に没頭しながらもあれやこれやと雑念がわいてくるのが楽しいからです 昭和59年から60年にかけて「週刊新潮」に連載された隆慶一郎の処女作である本著を当時どうして読まなかったのだろうとまず考える。どうやらあのころは本を読む時間がなかったんだと思い当…
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安部龍太郎 『葉隠物語』 今、武士道が見直されている??? 小説好きの読者向け、葉隠れ入門書

「葉隠」については詳しくない。ただ、その語感にはつつましさに潜む熱い思いがある。いつのまにか失ってしまった日本人の美徳を象徴しているようで、引きつけられるところだ。時代小説では葉室麟が描いた『いのちなりけり』にあった葉隠には共感するところが多かった。 ところが一方で、最近評論家の語るあるべき国家論やあるべき日本人論のなかに、よ…
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木内昇 『漂砂のうたう』 「自由」という虚構に踊らされる人々

漂砂? なじみのない言葉だ。スーパー大辞林によれば「波浪・潮流などによって流動する土砂。また、その移動する現象。河口・港湾などを埋積したり海岸を浸食したりする。」とある。 「漂砂のうたう」? 流れのままに動かされるだけのちっぽけな存在が索漠たる思いを抱えて人生をやり過ごしている………とも思えるが。それだけではなく、ちっぽけな存在であ…
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松井今朝子 『吉原十二月』 吉原遊郭案内の上級篇

これであなたは最高級の花魁になれます。 吉原屈指の妓楼主になれます。 そして超一流のお客になって吉原の奥深さを味わい尽くせるでしょう。 実践しないで本を見るだけの読者にとっては五つ星の業界ガイドブックでございます。容貌(きりょう)も気性もまるきり違うふたりの妓(おんな)。妓楼を二分する激しい嫉妬とつば競り合いの先に女の幸せはあ…
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池宮彰一郎 『四十七人目の浪士』 目下上映中『最後の忠臣蔵』の原作

忠臣蔵ものはやはり寒気の候に楽しむものだろう。 昨年の暮れにも民放テレビで田村正和が大石内蔵助を演じるドラマが放映されていた。特に新解釈の作品ではなく昔ながらの名場面をつなげたもので、特段役者の演技力が優れていたわけではないのだが、どうしても涙をこらえきれないシーンがいくつかあった。 「立花左近との邂逅」内蔵助が江戸下向の途中、…
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乾緑郎 『忍び外伝』  本格伝奇小説の復活

飾り帯にこうあった。伊賀の上忍・百地丹波によって一流の忍者に育てられた文吾は、何ゆえ忍びを目指すのか思い悩む。やがて北畠(織田)信雄率いる大軍が伊賀に迫る………「伊賀、百地」に「思い悩む忍者」とあっては、戦後、忍者ブームのはしりとなった村山知義『忍びの者』の再来かと思った。また「信雄率いる大軍が伊賀に迫る」のであれば、和田竜の第二作…
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松本清張 『かげろう絵図』 清張初期の長編大衆時代小説 仔細な江戸の描写

『かげろう絵図』は昭和33年~34年に「東京新聞」に連載された清張初期の長編時代小説である。初めて読む作品だが森村誠一『悪道』に物足りなさを感じたところで手に取った。 寛政から文化・文政、天保と長期政権を執った十一代将軍徳川家斉は将軍の座を家慶に譲った後も引き続き大御所として権力の座にあった。 政務を忘れ遊蕩におぼれるこ…
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