テーマ:キリスト教神学

メルヴィル 『白鯨 モービィ・ディック 下』 エイハブVS白鯨。両者の見せる絢爛たる「悪」の競演

博覧強記で鳴るウンベルト・エーコの作品は「百科引用大小説」と言われた。ぼくにとってそれは百科事典を傍らに置いて首っ引きにしないと理解し得ないという、とんでもないしろものだった。 メルヴィルの『白鯨』であるが、とにかく鯨に関する種類、生態、分布などの分析的・分類的記載の詳述がいたるところに現れる。博物誌的な話題ばかりではない。解剖学…
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メルヴィル 『白鯨 モービィ・ディック 上』 イシュメールが語った酷薄の世界にわが国の混乱を見る

小学生だったぼくが読んだ『白鯨』は児童向けに模様替えされた作品だった。当時は日本人作家の手になるオリジナルの新作児童文学は影を潜めており、たいがいは海外の古い作品であり、その中に大人の読む小説を子供向けに書き直したものがたくさんあった。ほとんどは大人になってから読み直したものだが、『白鯨』だけは今になるまで手をつけることができなかっ…
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ウンベルト・エーコ 『バウドリーノ 下」 司祭ヨハネの国の「虚構」を知ったバウドリーノの回心

「下巻」は「上巻」の動・高揚感から静・虚脱感へと見事な転調をみせる。「上巻」は、フリードリヒ1世の皇帝即位1155年ごろから始まり、1187年の彼の第3回十字軍参戦までが語られている。 「上巻」に登場するバウドリーノは、のちに語られるこの皇帝の歴史上の偉業、そのポイント、ポイントすべてをお膳立てしていった陰の主役であり、その活…
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ウンベルト・エーコ 『バウドリーノ 上』 影で歴史を創る稀代の策略家バウドリーノは神か?

フリードリヒ1世の臣下バウドリーノ。嘘つき。いや稀代の策略家。皇帝、教皇、都市同盟とそれぞれは内部に波乱の種を持ちながら三すくみだ。しかしひとたび権力武力で他を圧するとなれば、大勢を束ねるために普段は実体がない「権威」を実体化したくなる。日本流の大義名分だ。錦の御旗だ。何か事をするにあたっての根拠、疚しくない口実。あることないことで…
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ウンベルト・エーコ 『薔薇の名前 下』 複雑に仕掛けられた複数のテーマを整理すると

この小説にはややこしい迷路が登場するが小説の構造自体が迷路になっているのだ。いくつかの重要なテーマがあってそれがいくつもの断片になってバラバラと構成されている。わかりやすく時系列で述べられているのは連続殺人事件だけなのだ。せっかく読んだのだからもう少し理解してみたくなったので再読した。ついでに気になるテーマごとに再整理してみた。 …
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ウンベルト・エーコ 『薔薇の名前 上』 ミステリー史上に燦然と輝くエーコの最高傑作

文学史上に燦然と輝く傑作であると折り紙づきながら、まことに難解であるとの定評から手を出しかねる小説はいくつもあるが、探偵小説、推理小説の分野ならば、ウンベルト・エーコ『薔薇の名前』などはその代表格といえよう。実際のところ同じエーコの『フーコーの振り子』には手を焼いた。「百科事典引用大小説」などと言われている。そのままでは読者が理…
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「イエスの生涯 /遠藤周作」について

「イエスの生涯 /遠藤周作」について Thanatosさんのこの記事を見て遠藤周作のキリスト観をどう受け止めるのかについて共通するところがありました。 私も「沈黙』から本著『イエスの生涯』や『死海のほとり』など一連のテーマを読んで 「イエスの行動に計算があるとの感じ」あるいはキリスト教にあるある種のいかがわしさを拭えなかったのですが…
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マシュー・パール『ダンテ・クラブ』が示唆する現代アメリカの狂気

今アメリカで勢力を強めつつある「知的設計論」をご存じだろうか。私は8月9日の日経紙コラム「地球回覧・進化論論争米国で再燃」で知ることになった。アメリカではしばらく前まで進化論を学校で教えること禁じる州法があって、今なおその賛否が分かれている。最新の世論調査でも「人間は神の手で作られたと信じる」と64%の人が回答するという。 「…
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私が読んだマックス・ウェーバー「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」終わり

10.グローバリゼーションの急速な進展とアメリカのエートス この四半世紀、特に20世紀の最後の10年は装いを新たにした経済的合理主義が国家間を串刺しに貫いたときであった。情報技術の飛躍的進歩によって瞬時に大量に管理された資本の国際間移動が可能となった。国家間を自由に移動して自己増殖する資本の運動こそがボーダレスの経済活動の究極に見…
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私が読んだマックス・ヴェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」その5

8.今なぜヴェーバーか 昨年、羽入辰郎著『マックス・ヴェーバーの犯罪』というヴェーバー研究論が発表され話題になった。この内容は知らないのだが、広くには、プロテスタンティズムが存在しなかったら資本主義は誕生しなかったのか?との観点からするヴェーバー批判があるところである。 ヴェーバー自身そういう断定は避けているのであって、これは的…
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マシュー・パール『ダンテ・クラブ』 海外ミステリーではついぞお目にかかれなかった骨太の傑作だ。

著者が構築した縦軸は三本あろうかと思われる。そしてモチーフは一貫してダンテである。このかなり消化の難しい縦軸と横軸がむりなく融合しているところにこの作品の値打ちを見出す。 1.1865年、南北戦争直後のボストン。ダンテ生誕600年にあたるこの年、この街にアメリカ初の『神曲』の翻訳出版を目指し、『地獄編』の翻訳に取り組んでいる文…
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私が読んだマックス・ヴェーバ- 『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」その4

7-2.非合理と合理の合体 全く私などは知らなかったことなのだが、カルヴァンの根本にといわれる教義がある。 神に祝福される人間と神に拒否される人間は生まれながらにして定まっている と説くのである。 つまり、高価な免罪符を買おうが、 教会に多額の寄付をしようが、 聖職者に懺悔をなそうが、 敬虔な祈りの日々を過ごそうが、 …
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私が読んだマックス・ウェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』3

6.エートス ヴェーバーを理解するうえで欠かせない概念に「エートス」がある。 大塚久雄先生の解説では 宗教的倫理であれ、あるいは単なる世俗的な伝統主義の倫理であれ、そうした倫理綱領とか倫理的徳目とかという倫理規範でなくて、そういうものが歴史の流れのなかでいつしか人間の血となり肉となってしまった、いわば社会の倫理的雰囲気とでも言う…
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わたしが読んだマックス・ヴェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』2

3・キリスト教にある合理性 ヴェーバーの示唆をまたずとも、歴史的に見ればキリスト教は発祥のときから合理的思想と融合しやすい教義であった。イエスの生きた時代は人間の文化が東方から西方へ、呪術から合理・理性へと転換する大移行期であった。ギリシアの思想家たち──彼らの影響は、ローマ帝国を通してヨーロッパに広がっていったのだが──は、理性を発…
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私が読んだマックス・ヴェーバー『プロテスタンティズの倫理と資本主義の精神』

先日ホリエモン騒動をとりあげた日経紙のコラムでマックス・ヴェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』を引用、マーケット至上主義の世界にも一定の倫理観が必要ではないかと述べていた。 今年は本著が発表されてちょうど百年になるという。 学問とは全く無縁でただサラリーマンをやってきたオジサンが、これは2003年の春に読んでま…
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今日の日経紙「核心」によれば、今、マックス・ヴェーバーの再評価だと。

二つの買収劇が日本を揺さぶっている。ひとつはニッポン放送をめぐるライブドアとフジテレビの攻防であり、もうひとつは郵政民営化をめぐる政治のあつれきだ。 そして それは戦後日本の経済システムがきしみながらも、終わりを迎えたことを示している。 とし、資本主義の進化が必要だと述べるが、必ずしもグローバル競争の勝者となった米国流…
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神はいつまで「沈黙」されるのか?

「獣の皮をかぶった聖者。」について 遠藤周作『沈黙』、私のキリスト教義に対する疑問の入り口でした。 20数年も前になろうか、遠藤周作の『沈黙』を読んで、キリスト教義にある不可解な原理にまさに触れたような気がしたものだ。 幕府の切支丹禁令下、その迫害にあい、無残な責め苦の中でキリシタンたちは 「なぜ神は救いの手を差し伸べてくれない…
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03/02/01目からうろこのキリスト教誕生の背景-2

バーバラ・スィーリング 『イエスのミステリー 死海文書で謎を解く』 隠れた新事実として実に驚くべきものが明らかにされるため、この聖書解読は上質のミステリー同様スリリングである。 たとえば 「イエスは十字架の上では死ななかった。友人たちに墓の中から助け出され、ローマに到着する」。この著はいわゆる「とんでも本」の類だと評するむきがある…
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03/02/01目からうろこのキリスト教誕生の背景-1

バーバラ・スィーリング 『イエスのミステリー 死海文書で謎を解く』 まず、死海写本あるいは死海文書(しかいもんじょ)とは? 1947年から1956年にかけて死海北岸クムランの洞窟等から発見された最古の旧約聖書写本を指す。旧約聖書のほかにクムラン集団エッセネ派に関する文書が含まれている。ネーミングの感触からしてもミステリアスなのだ…
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宗教には縁のない私のキリスト教に関するまじめな疑問その2 『小説 聖書 新約編』

2002年12月5日 前に読んだアベカシスの 『クムラン』ではイエスですら磔刑の苦痛のなかで 「なぜ神は私を見捨てるのか」 と絶望することが記されていた。 これでは往生はできません。 この神の子にして救われなかったとするこの小説に虚構としての面白さを感じたのである。 しかし、どうやら虚構と断定するにはそう単純ではない…
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宗教に縁のない私のキリスト教に関するまじめな疑問 その1

最近は酒の席でも宗教に関する話題が増えています。長年、論語・老子・荘子・韓非子などを一緒によんできた仲間には洗礼を受けたクリスチャンもいて、いい加減な扱いではなくいろいろな観点で話が盛り上がるときがあります。そんな席でわたしはこんなことをいいました。 20数年も前になろうか、遠藤周作の『沈黙』を読んで、キリスト教義にある不可解…
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平和の伝道者であったローマ法王が神に召された 『小説 聖書 旧約編』

宗教とはずっと無縁の立場であった者が聖書を読んでみる気になった時がある。そのときウォルター・ワンゲリン 『小説 聖書 旧約編』。小説であれ「聖書」なるものを読んでみた。いまどき、不謹慎なことかもしれないが、キリスト教の神に関するその時の印象はやはり現時点でも変わらない。 2002年11月24日 このベストセラーの著者ウォル…
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2002年11月17日 「クムラン」の続編 この好戦的神学ミステリーは本当に怖い。

神は人間に対し、限りない愛をお示しになる存在と思っていましたが、それは誤解だったような気がします。 エリオット・アベカシスには『クムラン 蘇る神殿』と言う作品があって、これは 「クムラン」の続編。前編で明らかにされた洞窟の住人、2000年のときを超えて隠遁する・エッセネ派共同体が2000年4月に物語の主人公アリーをメシアに選ぶ…
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ヴァチカンの枢機卿が「ダ・ヴィンチ・コード」にケチ

をつけたと先月のニュースにありましたが、キリストにまつわる重大秘事を今なお受け継いでいる組織を背景にした「ダ・ヴィンチ・コード」が世界的ベストセラーになったことから起こった波紋でしょう。 エリオット・アベカシス 「クムラン」という小説は幸い?これほどのベストセラーにはならなかったからこういう話題は聞いておりませんが、「ダ・ヴィンチ…
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「【ダ・ヴィンチ・コード】」について

「【ダ・ヴィンチ・コード】」について 世界史を動かす巨大な陰謀がある。これまでの人類の歴史はその陰謀の展開の過程としてあった。あるいは、延々として闇の結社に守り継がれている巨大な秘密がある。それが白日のものになれば現在の世界秩序は崩壊する。 この種のミステリアスな骨格に各方面の専門知識、文明論、宗教論などなど読者をうならせる薀蓄を絢…
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「ダヴィンチ・コード」について

「ダヴィンチ・コード」について いかにも難解さで名の高いウンベルト・エーコを思い浮かべて読み始めましたが、痛快。インディ・ジョーンズばりの追いつ追われつの娯楽大作でした。  ダヴィンチ・コード にほんブログ村
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2001年5月12日 青来有一「聖水」に見る魂の救済

この現世で生を得ている生身の健康人にとっては、来世の有無など丹波哲郎先生の領域とばかりにバラエティー番組に楽しみ、まして神仏の御加護などと当てにするもヘチマもなく、ただのうのうと、日々これ瀆神の行為を積み重ねしているのであるが、パチンコ屋の数ほどあると聞くあまた宗教・宗派のいずれかの門下信徒のかたがたであれば、「まった…
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リアルタイム 振り回されたウンベルト・エーコ 『フーコーの振り子』

この振り子に振り回されて10年余り、ようやくひととおり読み終えて、もらすため息………。やはり、ダン・ブラウン『ダ・ヴィンチ・コード』のほうが面白かったなぁ。 初版本を買ったのが1993年のことだ。読み出して冒頭。上野にある国立科学博物館のフーコーの振り子を思い起こしつつ、頭の中で地球儀の上に振り子をぶら下げて揺らしてみる。地球…
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2000年6月12日 佐藤賢一「カルチェラタン」の奥行きの深さ

佐藤賢一「カルチェラタン」は文体は軽妙、洒脱であるが実に懐深いテーマに挑戦した野心作である。 最大のミステリーは聖書だといわれる。確かに宗教そのものは不可解。 「カルチェ・ラタン」はルネサンス、宗教改革の時代にカソリックを奉じる若者達の信仰に対する懊悩をエンタテイメントとして描いた大作。聖職者と政界・財界の必然的癒着、聖…
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リアルタイム 新刊紹介ダン・ブラウン 『ダ・ヴィンチ・コード』

理解できない「知のラビリンス」よりは疾走感あるエンターテインメントがよろしい。 世界史を動かす巨大な陰謀がある。これまでの人類の歴史はその陰謀の展開の過程としてあった。あるいは、延々として闇の結社に守り継がれている巨大な秘密がある。それが白日のものになれば現在の世界秩序は崩壊する。この種のミステリアスな骨格に各方面の専門知識、…
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