テーマ:冒険小説

スティーヴン・ハンター 『第三の銃弾』 あの伝説の狙撃手がJFK暗殺事件の謎に肉薄したが………

1999年から2000年の頃、スティーヴン・ハンターの『ブラック・ライト』『極大射程』『狩りのとき』と絶頂期のスワガーシリーズに夢中になった。ジェイムズ・メイヤーの『地上50ミリメートルの迎撃』という先行した傑作もあって、スナイパー冒険小説は花盛りといったところだった。派手なアクション、意表を突く展開、スリリングでスピード感あり。ズバリ…
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ジェフリー・ディーヴァー 『バーニング・ワイヤー』 おなじみリンカーン・ライム 今回の趣向を楽しみに

ジェフリー・ディーヴァーのお家芸だ。 そして本著はリンカーン・ライムシリーズの第9作にあたるそうだ。 ところでわたしはJ・ディーヴァーをどれだけ読んでいただろう? 1999年1月   ボーン.コレクター  ※ 2000年3月   静寂の叫び 2000年9月   悪魔の涙 200年10月   コフィン.ダンサー  …
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ジェフリー・ディーヴァー 『007 白紙委任状』 リンカーン・ライムの捜査手法でボンドが凶悪犯に迫る

僕は大学生だったが、『007は殺しの番号』を家庭教師先の坊やと渋谷の東急文化会館で観たときの、これまでの映画にはなかった新鮮なインパクトを忘れられない。あのダンディズムとセクシャルな美女とのからみ、大仕掛けで荒唐無稽な大陰謀と闘うハードなバイオレンスに魅せられて以来、ボンド映画とはつきあいは長い。 フレミングの原作は『ムーンレイカー』…
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佐々木譲 『エトロフ発緊急電』 この完成された戦時スパイ小説の傑作を再読する

佐々木譲といえばいまでこそ警察小説の第一人者として知られるが、その初期には第二次大戦を背景にした軍事・冒険・諜報を描いた名作があった。(『ベルリン飛行指令』『エトロフ発緊急電』『ストックホルムの密使』 当時第二次大戦三部作と言われた)手嶋龍一『ウルトラ・ダラー』を読んだ直後だからだろう、これぞ日本を代表する第1級のスパイ小説だと『エ…
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手嶋龍一 『ウルトラ・ダラー』 一流の政治・外交評論家の手になる国際謀略小説の出来具合は?

どちらかというとノンフィクション系の人間ドラマをよく読んでいるH君が貸してくれた。 著者はかつてNHKでワシントン支局長などを勤め、現在は政治・外交評論家としテレビなどではお目にかかることがある。このような情報通の人が著した「小説」は現実を大きく飛躍できないために小説としてはあまり面白くないという思い込みがある。 「衝撃のドキュ…
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道尾秀介 『カラスの親指』 読者を騙すテクニックが凄いが複雑すぎて………

道尾秀介で期待した『光媒の花』はいささか拍子抜けであった。この二冊目『カラスの親指』がなんとなくコンゲームの傑作『スティング』のように見えたものだから「最高の逆転劇」を楽しもうと手にした。 詐欺師である中年二人の同居生活。ここに掏摸師である少女が舞い込む。さらに彼女の姉とそのボーイフレンドの奇術師が押しかけて、五人の同居生活が…
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辻原登 『闇の奥』 現代人の喪失感に希望の光があてられるか?

世界各地に残る小人伝説を追う一大ロマン小人といえば白雪姫、一寸法師、今公開中の映画『アリエッティ』であり、ファンタジー、子供の夢の世界を思い浮かべる。この作品の小人は身長1メートルほどの種族であり、かわいらしさの象徴ではない。人跡未踏の地に住む、未発見の小さい種族を捜し求める学術的探求であるが、にもかかわらず、それを追い求める人たちは、…
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樋口明雄 『約束の地』 老猟師と巨大野獣との死闘が見せ場

6年前になるが著者の『光の山脈』をはじめて読んだときの印象が忘れられない。真保裕一の『ホワイトアウト』以来、久しぶりに日本の山岳地帯を舞台にした本格冒険活劇小説の充実感を味わった。そして単なる冒険小説ではなかった。大自然の営みは人間が冒してはならない神聖なものだとする叫びに心洗われる思いだった。それは南アルプスの麓で生活する著者…
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佐々木譲 『巡査の休日』 マンネリ気味の道警シリーズのこれは蛇足であろう

北海道警察シリーズ第4弾。『うたう警官(改題 笑う警官)』『警官の紋章』は読んでいる。「警官」ではなく今回は「巡査」である。警察小説のタイトルに「巡査」は珍しいのではないだろうか。巡査とは法で定められた警察官組織の最下位の階級であり、それをあえて強調しているところに佐々木譲らしさがある。警察小説の第一人者となった佐々木譲が「刑事」と…
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ジェフリー・ディーヴァー 『ソウル・コレクター』 毎度おなじみリンカーン・ライムシリーズの今回は?

毎度おなじみ、あのリンカーン・ライムシリーズだ。 毎度おなじみであるから、いささか食傷気味なのだが、ついつい手が出る柿の種みたいなところで今回も手に取った次第。 このシリーズだが、シリーズごとに生み出される超人的な知能をもつ犯罪者、その残虐、異常な個性が魅力的である。そしてライムチームと知恵比べをゲーム感覚で楽しむ。疾走感が…
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柳広司 『ジョーカー・ゲーム』『ダブル・ジョーカー』 とにかく第一話は光っているぞ。 

日本が大陸侵略を本格化した頃、そのころはどうやら日本には英米独露に匹敵するまともな諜報機関がなかったらしい。なぜかというと諜報活動は卑怯、卑劣な行為であって日本古来の武士道に反するという皇国軍人精神が信奉され、特にその最右翼であった陸軍がこれを毛嫌いしていたからだという。そんな馬鹿たれ脳みそでは戦争に勝てないと頭脳明晰、実行力で抜群…
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スティーグ・ラーソン 『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士』 あまりに強すぎるリスベットたちだから

巻末の「解説」で池上冬樹が「だが本書の興趣はスパイ小説の側面ばかりではない。終盤になると今度はリーガル・スリラーの側面が強まるからである」と述べておられる。たしかにその通りなのだが………。 宿敵ザラチェンコによって銃弾を受けたリスベットは死の一歩手前でよみがえり、逆襲してザラチェンコに重傷を負わせた。かろうじて一命をとりとめた…
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下川博 『弩』 楽しく読めて深みのある歴史小説

「弩」とは。古代中国で開発された弓の一種。宋代に改良され戦場での主力兵器となる。西洋ではクロスボート呼ばれ、強力な破壊力と命中精度で重装騎兵を駆逐。日本では奈良大和朝廷が採用、律令国家の基本装備となるも、鎌倉時代以降は鍛錬のいらない操作性故か、日本の侍の武器たりえなかった。 これは、その弩を手にした因幡の百姓たちの物語である。時代…
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スティーグ・ラーソン 『ミレニアム2 火と戯れる女』 マカロニウェスタンが登場したときのショック

背中にドラゴンのタトゥーを入れた女性調査員リスベットにたたきのめされた彼女の後見人ビュルマン弁護士は、復讐を誓っていた。ビュルマンは彼女を心の底から憎む人物を探し出した。彼はその人物と連絡を取りリスベットを拉致する計画が動き出す。その頃、月刊誌『ミレニアム』の発行責任者ミカエルらはジャーナリストのダグとその恋人のミアが進める人身売買…
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スティーグ・ラーソン 『ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女』 高福祉国家スウェーデンの闇を告発

スウェーデンはなじみのない国だ。知らない国は理解しにくいから、そこの小説はあまり読む気にならないのだが、この作品は世界的なベストセラーになっているとの宣伝についつい乗っけられたことによる。 私にあるスウェーデンの断片は映画のイングマール・ベルイマン『処女の泉』、フリーセックス、高福祉国家程度に過ぎない。『処女の泉』は高校生のころだ…
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宮本昌孝 『海王 下』 これはまさしく大衆小説の傑作だ。

天下一統の大業と世の安寧を目指しながら、謀反に斃れた足利将軍・義輝。その夢を継ぐはずだった信長もまた本能寺に斃れた下巻は光秀、秀吉、家康らが信長の覇業を継ぐべく義輝の遺児・海王を天下争奪戦略の隠し玉にするという破天荒なストーリーだ。歴史の流れから言えば、光秀が滅ぶ山崎の合戦が詳細に語られ、織田・秀吉連合軍と家康軍のいわゆる小牧・長久…
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宮本昌孝 『海王 上』久しぶりの大型娯楽時代小説の傑作だ

このところテレビのドラマは歴史小説、クイズも歴史、バラエティ番組も歴史秘話と「史実」花盛りであるが………。まずは壮絶バトルを堪能しよう。そして改竄された虚構の歴史を大いに楽しむ余裕のある読者ならば、これは最近とんとお目にかかることがなかった大スケール時代小説の掘り出し物だ。 剣豪将軍として名高き足利第十三代将軍・義輝が松永弾正の奸…
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西木正明 『ウェルカムトゥパールハーバー下』  リメンバーではないよ。ウェルカムトゥパールハーバー!

わが国がアメリカの一方的戦略に乗りやすい体質だとはかねがね思うところなんだが、真珠湾もそうだったんですよと言われても、それは素直には受け入れられないなぁ。 三国同盟の結成で無謀な覇権争いに関与した日本。そこに仕掛けられた巨大な罠。激烈な諜報戦の果てに、真珠湾の奈落が待っていた。この作品の骨格は真珠湾奇襲による太平洋戦争勃発は日本側…
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西木正明 『ウェルカムトゥパールハーバー 上』 太平洋戦争勃発前夜の外交秘話として楽しめる。

プロローグはチャーチルの祝杯だ。 「諸君、日本がハワイを奇襲攻撃した。永らく我々が待ち望んだ状況になった。周到に練られたトレチャラスアタックだ。アメリカは間違いなく日本に宣戦を布告する。それは同時にヨーロッパ戦線に参入することを意味する。」 船戸与一の『満州国演義5 灰塵の暦』は昭和12年(1937年)の満州大虐殺を描いた。…
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ジェフリー・ディーヴァー 『スリーピング・ドール』  あの『ウォッチメイカー』、キャサリン・ダンスが

ジェフリー・ディーヴァーの作品はどれも追いつ追われつのパターンは似ているのだが、それぞれに独自の趣向を凝らしてついつい手を出してみたくなる魅力がある。この最新作もいつもの疾走感と新たな工夫を楽しもうと読み始めた。カルトを率い、8年前に一家を惨殺したその男が、大胆かつ緻密な計画で脱走したカルトのリーダーとは日本であればすぐにあの麻原某…
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桐野夏生 『東京島』 極限で露呈する現代人のサバイバル作法とは………と大見得切った作品なのかな?

[桐野夏生] ブログ村キーワード 32人が流れ着いた太平洋の果ての島に、女は清子ひとりだけ。いつまで待っても、助けの船は来ず、いつしか皆は島をトウキョウ島と呼ぶようになる。果たして、ここは地獄か楽園か?いつ脱出できるのか………。 清子ら夫婦は夫が退職金でクルーザーをもてる、そのくらいの身分だったようだ。後から流れ着いた23人…
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船戸与一 『満州国演義4 炎の回廊』 日本の夏は大陸に残した残酷な爪あとを省みるべき季節である。

日本の夏は、愚直に平和を祈念する季節である。その素朴な祈りの心を持って大陸に残した残酷な爪あとを省みるべき季節である。 この時期対中国外交、軍事活動は比較的落ち着いていた。毛沢東が長征と名づけた工農紅軍の西への迷走を蒋介石の国民革命軍は追い続けているため中国と関東軍の軍事衝突の気配はない。 ただ満州では抗日ゲリラに対する…
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伊坂幸太郎 『ゴールデンスランバー』 初めて読んだ伊坂幸太郎

伊坂幸太郎の作品をはじめて読んだ。「ゴールデン スランバー」とは極上のまどろみを指すもの。子守唄でビートルズのアルバムにもあると解説されているが作品のテーマとどうかかわっているのか私の感覚ではわからなかった。 「戦後ほぼ一党独裁を貫いてきた労働党から離党し自ら自由党を立ち上げた………」 という一節をみて、労働党?自由党?コリ…
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貴志祐介 『新世界より』 異色のSFファンタジーノベルだが………

デビュー作の 『黒い家』 (1997年)。韓国製の映画が目下上映されているとのこと、感情を欠如した殺人鬼が地獄図を見せる正視に耐えないおぞましいシーンの連続だそうだ。10年以上前の原作だが「生まれながらの殺人者」という突然変異的存在を暗示し、最近のように不可解な犯罪が頻発する日本を当時予見するような怖い作品であった。 『天使の囀り…
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船戸与一 『満州国演義3 群狼の舞』 船戸与一が冷酷にあぶりだす人間性悪の極限図。

人の性は悪にしてその善なる者は偽なり。人間の本性には生まれつき利益を追求する傾向があり、それに従ってゆくから、他人と争いになって譲り合うことがなくなるのである。また生まれつき嫉んだり憎んだりする傾向があり、それに従ってゆくから、他人を害するようになって誠心の徳がなくなるのである。(荀子 性悪篇) 昭和7年 1月上海事変、2月…
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船戸与一 『満州国演義1 風の払暁』 圧倒的迫力で描かれる昭和激動史

船戸与一の作品では『蝦夷地別件』、「滅びの残酷史」というべき最高傑作があったが、この第一巻、『蝦夷地別件』に匹敵する、あるいはこれを超えるかもしれないと期待させられる大長編の幕開けである。 大河ロマン「満州国演義」の第一巻「風の払暁」は中国大陸と日本を舞台にして昭和3~4年という短い期間を描いている。400ページに近いボリュー…
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ジェフリー・ディーヴァー 『ウォッチメイカー』 食傷気味だが「このミス」第一位かと手にとった

またまたライムシリーズか、と食傷気味になりながらもついつい手にとってしまう。さて今回の作品のできばえは?と、このシリーズ、そこまで新機軸が期待できる魅力がある。ジェフリー・ディーヴァーはたしかなストーリーテラーなのだ。これは第7弾だそうだが、私はこれで6作品を読んだことになる。 『ボーン・コレクター』『コフィン・ダンサー』『魔術師…
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浅田次郎 『中原の虹』 傑作『蒼穹の昴』の続編。待ちに待った全四巻を読み終えて

新国家建設に混迷する中国大陸。民の平安のために!と張作霖は燃える。彼を新しい英雄にしようとする浅田次郎の着想は成功しただろうか。 冒頭、100歳を超えた占い師の老婆から汝、満州の覇者となれ 汝東北の覇王たれかし 走れ、はるかなる中原の虹をめざしてと予言を受けたのは貧しい青年・張作霖だった。『蒼穹の昴』の冒頭、極貧の農民少年・李…
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笹本稜平 『越境捜査』 わかりにくい警察機構を理解し警察小説を楽しく読もう。

日本の警察もアメリカ並みにここまで腐っているのか?いやまさかここまでのことはあるはずがない、と思ったところで、防衛省のあんな醜悪な大犯罪が起こるんだから、この作品だってフィクションをフィクションとして楽しめばいいと単純には割り切れなくなっちゃうではないか。 佐々木譲のシリアスな警察小説『警官の血』をじっくり読んだ後だけに、巨悪と戦…
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グレン・ミード 『地獄の使徒』  グレン・ミードだからと期待してはいけない。

グレン・ミードの新作が出版され、『雪の狼』が強く印象に残っていたものだから大いに期待して飛びついた。『雪の狼』の後にいくつかの長編を発表していたとは知らず、この『地獄の使者』を久々に発表した第二作だと思い込んでいた。ソ連要人暗殺を軸にした『雪の狼』は第一級の大型スパイサスペンスだった。これがグレン・ミードの作風であり、『地獄の使者』…
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