日記風雑読書きなぐり

アクセスカウンタ

zoom RSS 03/09/06 荒山徹 『十兵衛両断』 めちゃくちゃに面白い伝奇小説が登場した 

<<   作成日時 : 2005/05/03 22:29   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 3 / コメント 0


「朝鮮は古より文を尊ぶ国柄。剣術の如き野蛮なるもの、絶えて我が国に存在せし例はござらぬ」
よって妖術ノッカラノウムにより柳生十兵衛の肉体と剣技を奪いその指導のもとに朝鮮国内に正統の柳生新陰流を継承する強力な暗殺部隊を養成する。

古来中国の属国であった朝鮮国は中国が明から清朝へ政権が交代することで存亡の帰趨が定まらない。豊臣秀吉の侵略もありこの国家的危機に政権内抗争が激化している。そして日本の武力、政治力を手玉にとって中国と対抗しようとする勢力の大陰謀が徳川体制の裏舞台を一手に担う柳生一族をまきこみ、五つの暗闘物語を生んだ。

伝奇小説とは、事実とされている歴史的人物の逸話、事件などを縦糸とし、横糸に不可思議な超自然現象、怪異を織り込むもので、虚と実とほどよい調和が織りなす絢爛たる夢幻世界である。
風太郎忍法の奇想天外と
柴錬剣法の凄艶を
五味康祐の硬質な漢文口調の文体で整える。
そして著者の朝鮮歴史や文化に対する確かな認識と史実としての典拠文献の紹介がこの滅法面白い荒唐無稽活劇を大人の鑑賞にたえる本格的伝奇小説として完成させています。

同時にこれは一流の剣豪小説として楽しむことができる。
朝鮮側柳生十兵衛の野心と徳川柳生十兵衛の怨念が激突する一騎打ち、表題作『十兵衛両断』
剣聖・神泉伊勢守の伝える剣禅一如の正剣対外道剣に堕した柳生新陰流、剣聖の兄弟弟子同士にあたる疋田豊五郎と柳生石舟斎の対決が見せ場の『柳生外道剣』
朝鮮妖術が生み出した複数の柳生但馬守宗矩と新陰流の極意に達した剣豪陰陽師柳生友景の妖気ただよう戦慄の対決『陰陽師・坂崎出羽守』
陰惨な出生の怨念が剣を振わせる朝鮮側柳生純厳と実の父柳生石舟斎とが怨霊崇徳上皇の眼前で繰り広げる骨肉の死闘『太閤呪殺陣』
そして朝鮮妖術の生んだ三人目の柳生十兵衛とその率いる新陰流精鋭剣士団を相手として虐殺された同士のための復讐の念に十兵衛の甥・柳生六丸が単身血路をひらく大殺陣『剣法正宗溯源』

剣豪小説の定義には詳しくありませんが、
それぞれの剣士が披露する剣法の故事来歴と
その人格が映える特異な剣技、
そして壮絶な死闘がつきものです。
この肝心な娯楽性にたいする筆者の独創性は実に極め付きであります。

今年は伝奇時代小説が光っていますね。同じ著者の『魔岩伝説』の朝鮮通信使秘話といい、宮本昌孝『ふたり道三』で描く斎藤道三の奇怪な生涯といい、これが加わり傑作が次々と発表され、このジャンルの「本物」を楽しむことができる年となっています。

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(3件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
「ジャンル」でブログ検索してみました。
「 ジャンル 」の検索結果で、「日記風雑読書きなぐり .. 」さんを紹介させていただきました。つながり系サイトです。 ...続きを見る
日刊カタログ
2005/05/07 13:58
荒山徹 『柳生薔薇剣』 アナクロかもしれないがとにかく面白い。
「司馬遼太郎の透徹した歴史観と山田風太郎の奇想天外な構想力、さらに柴田錬三郎の波瀾万丈の物語展開を受け継ぐ時代小説作家がついに誕生した」文芸評論家・菊池仁 とこの賛辞はポイントをついているのだが、「ついに誕生した」とは認識不足じゃないか。 『高麗秘帳』に始まり『魔風海峡』 『魔岩伝説』 『十兵衛両断』と時代小説に新風を吹き込んだエンターテイナー、著者の実力はすでに定着しています。 ...続きを見る
日記風雑読書きなぐり
2006/01/23 21:16
「十兵衛両断」荒山徹
タイトル:十兵衛両断 著者  :荒山徹 出版社 :新潮社 読書期間:2006/09/26 - 2006/09/28 お勧め度:★★★★ ...続きを見る
AOCHAN-Blog
2006/10/20 23:36

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
03/09/06 荒山徹 『十兵衛両断』 めちゃくちゃに面白い伝奇小説が登場した  日記風雑読書きなぐり/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる