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help リーダーに追加 RSS 井上尚登 『T.R.Y. 北京詐劇 ペキン・コンフィデンシャル』久々の大型コンゲームロマン

<<   作成日時 : 2006/10/06 12:30   >>

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装丁帯にこうある。
天才詐欺師、伊沢修が帰ってきた!総統に、皇帝の座を。詐欺師には、財宝を!
甲骨文字に隠された謎、壮大な宴席。華麗なる駆け引きが、中国の未来を変える!
時は、1916年。稀代の詐欺師VS中国最高権力者 
詐欺師、武器は宮廷料理。ねらいは財宝。「遺跡をひとつ掘らせていただけませんでしょうか?」
袁世凱、野望は、皇帝即位。弱点は美味に目のないこと。

1999年に刊行された井上尚登のデビュー作『T.R.Y.』は実に印象的な作品でした。
題名からすると想像できなかったのであすが、まさか辛亥革命前夜のロシア・朝鮮を巻き込んだ中国・日本の政治的駆け引きを背景にしているロマンだとは。日露戦争、義和団事件、日韓併合、満州国建国など歴史の事実を上手に消化した波瀾万丈のコンゲームミステリーに仕立てていました。詐欺師、伊沢修の冒険、騙す相手は大日本帝国陸軍ですが最後の最後までハラハラさせられ、もちろん私も気持ちよく何度も何度も騙されてしまいました。

さて今回の相手は辛亥革命を横取りして総統になった軍閥、袁世凱に皇帝即位の餌をちらつかせ手玉に取ろうとするものです。
甲骨文字に隠された謎、壮大な宴席。華麗なる駆けひきが、中国の未来を変える!
袁世凱、河南省出身。1911年の辛亥革命によって首相に、清帝退位後、中華民国の初代大統領。1915年に帝位につくが、翌16年には反帝政運動が起こり失脚、憤死。装丁帯のキャッチコピーに「1916年」とありますがこれは間違いでしょう。帝政復活を目論んだ袁世凱と日本、欧米列強との綱引き、これに伝説だと思われていた殷王朝の存在が証明される河南省の文化史的大発見という史実を融合した背景により、前作よりさらにスケールアップしたコンゲームを楽しませてくれます。
ストーリー展開のスピード感がいい。上海で北京で日本で武安で、最終目的に向けて仕掛けた数々の詐欺劇がスリリングにテンポよく進んでいきます。
軽快さを倍増させるのが主人公顔負けのしたたかさで活躍する脇役たち。なんと魅力的なことよ。前回で契りを深めた革命派の豪傑・関虎飛、贋作屋の楊婆さん、腕白坊主の王小平、北京の大立者・徐勇老人、革命派の刺客・羅蘇文、ドイツ貴族のベルナー、落魄の映画監督ハワード・ウェイツなどなど。特に今回の立役者は宮廷料理の神様的存在であった祖父の血を引く跳ね上がり娘・江燕で、この娘とプロの調理人との腕比べ、そして袁世凱を招く大宴会料理の成果はと、大きな山場になっています。宮廷料理のうんちくもまた楽しい。
コンゲーム小説、詐欺や騙し合いをテーマにした痛快な犯罪サスペンスと一般にいわれます。この通りの痛快さを堪能できました。
革命の理念などはどうでも、ふんぞり返っている奴をやっつける、まして銭儲けならと、ドタバタと暴れまくるこの現実主義の仲間たちは愛すべきだ。これに対する袁世凱とそのスポンサーであるシャミール財閥の親子もまた愛すべき現実主義者といっていいでしょう。
善玉・悪玉の区別なし。ゲーム感覚の娯楽作、現実主義者同士の、というより欲ボケの悪党たちと言ったほうがふさわしい、滑稽なぶつかり合いをクスクス笑いながら楽しもう。もちろん義理と人情の浪花節もたっぷりと味付けされています。
ただし、この手のお話は登場人物同士の騙しあいに面白さがあるだけではない。読者を騙すどんでん返しの巧妙もまた楽しいものなのだが………。グイグイと一気に読んでいても読み手としては次の一手の見通しをつけられるヒントが先に用意されていて、なぜかそれが隠された伏線ではなく分りやすいものだから、やっぱりそうだったのかと、ほっと胸をなでおろすことがしばしばで、とんでもない仕掛けに騙されるというあの快感には至らないのがいささか煮え切らないところなんです。

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『T.R.Y 北京詐劇』 井上尚登
T.R.Y. 北京詐劇(ペキン・コンフィデンシャル)著者:井上 尚登販売元:角川書店Amazon.co.jpで詳細を確認する1916年中国、革命家と暗殺者が闊歩する時代が望んだのは天才詐欺師の復活 天才詐欺師の新たな狙いは袁世凱 −総統に、皇帝の座をマイ・オールタイムベスト10に食い込んで来るであろう『T.R.Y』に後編が出ているという情報を入手して(遅っ!)さっそく手配しました『T.R.Y 北 ...続きを見る
まじょ。のミステリブロ愚
2008/01/24 08:24

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