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help リーダーに追加 RSS 桐野夏生 『メタボラ』 論評する資格のない自分に気がついた。

<<   作成日時 : 2007/07/04 18:22   >>

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ドキュメンタリー番組で「ネットカフェ難民」という人たちを知り、正直驚いた。住む家がなく24時間営業のインターネットカフェに寝泊りし、日雇い派遣労働などで食いつないでいる若者が急増しているのだそうだ。
そしてこの『メタボラ』である。「ネットカフェ難民」ではないが同様に漂流するものであり、それは衝撃的だった。ホームレス、ニート、フリーター、ワーキング・プアそれぞれに定義はあるようだが、桐野夏生が過度にデフォルメした人物像などではない。どうやら実体を持って社会の一定層を形成しているとリアルに感じられるからである。衝撃的だったのは私が世間知らずなのだろうか、特に生活に困らない常識人の傲慢なのだろうか。格差社会、下流社会などと評論家気取りで是非論、起源論をやるよりもこれを読んでまずゾッとすることが大切かもしれない。

斉藤佑樹投手が早稲田大学に入学が決まったときに記者の質問に応えて大学では「自分探し」をしたいとカッコよく語ったシーンが記憶にある。それは感心したからではなくあの晴れやかな笑顔からはかなり異質な感じを受けたからなのだが。またNHKの最近の討論番組であったと思う。会社に就職しようとする若者が「自分を高めるために就職する」と発言していた。私の就職観とまるで次元の違うその発言に一瞬耳を疑った。「自分探し」って流行なのかもしれない。

記憶喪失の若者・ギンジが「自分探し」の旅に出る。そして見ず知らずの土地で知り合った若者・ジェイクたちと交わり、その経験を上書きしながらまったく新しい自分を作り上げていく。だが記憶が少しずつ戻って「破壊されつくした僕は<自分殺しの>旅に出」たことに気がつく。実の子を餓死させる親がいる現実の悲惨は残念ながらよくおこる事件になってしまったが、昔ならタコ部屋と呼んだに違いない過酷な労働、こんなことが本当にあるのだろうかとこれには寒気がした。労働意欲があるにもかかわらず扉を閉ざす社会の仕組みに若者が壊されていく。

これは昔なら金持ちのドラ息子と呼ばれたであろう若者がギンジと対極にあるジェイクだ。女にもてながら遊びほうけていたいという未成年者。ただし親から縁切りされたためにまるで金がないのはギンジと同様で食うためには、なれない労働もやむをえないのだが身につかない。沖縄。明るい太陽と青い海を背景に彼の宮古弁はチャラチャラと威勢がいい。自分をかえりみるなんてことは知らない。こういう若者がなんとなく生きていけることで逆に社会の仕組みが壊れていくのかもしれない。

彼らの周囲にいる若者は嘘をつかない悪くない他人を陥れようとはしない。ただし、それは目的を持たないからだという。搾取されたってなにも考えずに飯を食えればいいと文句をいわない人たちだ。ギンジとジェイクは両極だが中間に置かれるこの多数の若者たちこそ、むしろオジサンである私にしてみれば得体の知れない群れであって避けて通りたい存在である。

ドメスティックバイオレンス、ネット集団自殺、ホストクラブ、デリヘル、同性愛などなどとセンセーショナルな世相が盛りだくさん。そして沖縄であるから基地問題、内地人(ナイチャーと呼ぶ)と沖縄人(ウチナーと呼ぶのだそうだ)間の感情の揺らぎ、地方と中央の対立、知事選挙と政治向きエピソードにも事欠かない。
そして著者はこれだけの社会性ある重大テーマをてんこ盛りでみせて、後は知らんよとおっぽり出した印象で終わる。

宮古島の方言には意味不明なものが多くあった。そしてドミトリーとかバックパッカーさえ知らなかった私はここで使われているカタカナ語にはついていけなかった。きっとこの作品にどうのこうのと、ものを言うには私はあまりにも遠いところにいるんだ。と高みの見物を決め込む無責任なオジサンかもしれないけれどそのことだけは確信した。だいたい表題の「メタボラ」とはなんだったのか最後までわからなかった。ただなじみのあるメタボリック症候群とは無関係のようである。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
よっちゃん様
いつも楽しく書評拝読しております。
今回書いていらっしゃった、タイトル「メタボラ」の意味ですが、新陳代謝という意味があるそうです。
恥ずかしながら、私も孫引きなのですが……。
これからも楽しみにしております。
なつめ
2007/07/11 11:07
なつめさん コメントありがとうございました。沖縄弁 宮古弁と最近のカタカナ文字の氾濫、若者たちのこういう生き方に悩乱してしまいました。
よっちゃん
2007/07/11 13:10

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