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zoom RSS 五木寛之 『親鸞』 「善人なほもて往生をとぐ いはんや悪人をや」とはいったいなんなんだ?

<<   作成日時 : 2010/01/29 23:43   >>

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「とにかく面白い」との宣伝文句に引かれて手に取ったのですが、期待をこえてとにかく面白い作品でした。五木寛之の作品を読むのはこれがはじめて。著者は最近では仏教に関心を深めた著作、紀行活動が盛んなようで抹香くさい小説かなと思っていたものでしたが、スリリングな場面の連続で、終始、伝奇風時代小説を読むような疾走感を味わうことができました。

冒頭から緊張のアクションシーンでした。群集に混じった8歳の忠範(ただのり)・後の親鸞が都大路でうわさに高い2頭の猛牛の死闘を見物します。危ういところで命拾いする騒擾が起こります。これが後白河法皇の仕掛けたたくらみだとストーリーを飛躍させるところの巧みな運びにまずひきつけられました。まさに伝奇小説といってもいいでしょう。命を救ってくれたのが実に怪しげな人物たちでして、忠範は彼らと親交を結び、本当の世間を知ることになるのです。

つぶての弥七:後白河法皇配下の諜報組織・白河印字の頭目、
河原坊浄寛:河原の死体から衣服、食い物を頂戴する元武士・鴨川の聖、
法螺坊弁才:元比叡山の行者・弁舌巧みな巷の聖。
犬丸:忠範の家に仕える忠実な召使・実は夜な夜な博打を開帳する胴元。
敵対するは伏見平四郎:平清盛の親衛隊長、残酷無類の美少年。

「悪党」とはこんな連中を言うのでしょう。そしてすぐに二つのグループによる流血の抗争シーンが盛り上がりを見せてくれます。次はどうなる次はどうなると、ミステリー風な伏線も巧妙で、末広がりに連関した謎は大きくなりつつ、とにかく滅法面白いストーリー展開であることは間違いありません。
これらの「悪党」と厚誼を深める中で忠範は生きるも地獄、死んでも地獄という大衆の絶望を実感していくことになります。

下級官吏の家に生まれた親鸞は1181年9歳で慈円のもとに出家し、比叡山で堂僧として20年の修行を積みますが、悟りを得られず、29歳のとき京都六角堂に参籠して本尊救世観音に指針を求め、ここで聖徳太子の示現を得て、法然の門に入ります。ある女性の愛に導かれて聖徳太子が示現するくだりがドラマティックでした。
これまでの仏の道は、国を守るもの、朝廷の安泰を祈るもの、貴族や高家のためのものでした」「法然上人さまはこれまで名のない雑草のようにあつかわれていた、貧しい人や世間から卑しめられてきた人びとのためにこそ」「これまで救われない罪深い身だとされていた、わたくしたち女も平等に仏の光にあずかれる。それがどれほど大変なことかは、後の世になってはじめてわかることでしょう
そして「専修念仏」と
「善人なほもて往生をとぐ、いはんや悪人をや」
「弥陀の誓いぞたのもしき 十悪五逆のひとなれど」

これは宗教改革にほかなりません。弾圧が開始される。念仏を唱えればなにをやっても浄土へいけると門下からはこの教えを曲学、邪教化する過激派があらわれ、あわや都は火の海に………。

五木寛之はとても平易な文体で法然と親鸞の道を語ります。親鸞が悟りを得るまでの一段一段で描写される清らかな情景に私は美しい浄土をみるおもいで、南無阿弥陀仏と涙があふれるのを抑えられませんでした。死後の世界など考えられない、まして信仰心など毛筋ほどももたないものがそんなところで感涙するはずはないのですが、不思議でなりませんでした。私は歴史小説や時代小説を読むときに、癖でしょうか、普段は作品のテーマを現代に引き寄せ、現代の軸足で読んでいるのだと思います。ところがこの作品は逆に私を800年前の時代に立たせ、悪いことをすると地獄へ落ちると信じられていたその時代の人へと同化させる力があるようです。

おやをおもわば ゆうひをおがめ
おやはゆうひの まんなかに

にしのそらみて なむあみだぶつ
みだはゆうひの まんなかに


心洗われる思いで本を読み終えるということはめったにないことです。


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◆小童・忠範が“親鸞”を名乗るまでの成長物語/「親鸞」五木寛之
五木寛之の小説「親鸞」を読みました。 自分の無知をあまりさらけ出すのもどうかと思うのですが、私にとっては五木寛之氏の著作を読むのも(たぶん)初めてで、親鸞について書かれた書物を読むのも初めて。 さらに言えば、親鸞の起こした浄土真宗についても、日本史で習ったくら ...続きを見る
Viva La Vida! <ライターC...
2011/08/13 02:06

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