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zoom RSS 森村誠一 『悪道』 悪人・柳沢吉保と善人の忍者・流英次郎のマンハントチェイス

<<   作成日時 : 2010/09/20 11:59   >>

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「著者10年ぶりの単行本書き下ろし!」の時代小説
という魅力的なコピーが目に留まった。
77歳とご高齢でありながらその執筆活動の逞しさには感嘆させられる。最近は松尾芭蕉の奥の細道研究に熱心に取り組まれていると聞いている。昭和61年の『忠臣蔵』以降、著者の作品は読んでいなかったことを思い出し、懐かしい思いもあって手に取ったのが本著『悪道』である。

とにかく私にとって森村誠一氏は懐かしいミステリー作家である
氏の推理小説家デビュー作『高層の死角』は昭和44年でその後10年ぐらいの間に膨大な量のミステリーを精力的に発表してきた。日本型資本主義社会が本格的に発展していくいわば始動の時期に当たる。私がサラリーマンになってまもなくのころだった。犯罪が超近代的ホテル、新幹線、空港、いかにも躍動する都会の現代性を象徴した舞台で起こるところの都市型犯罪に独特の魅力があった。ホテルマンの生活を送った経験が著すホテルビジネスの裏話が面白かった。トリックやアリバイ崩しの本格推理小説としても成功していて当時の新作はかなり読んだ記憶がある。

中でも昭和46年の『超高層ホテル殺人事件』はちょうど超高層ビルのシンボルとなった「霞ヶ関ビル」(昭和43年オープン)が立ち上がる威容を職場から毎日目にしていたことと重なって、あの斬新な大型トリックは忘れられない。

時代小説では『忠臣蔵』(昭和61年)を読んでいる。登場人物の銘々伝がよく描けていたこと、吉良邸討ち入りの激戦にはこれまでの忠臣蔵モノにはない迫力があったことが印象に残っている。池宮彰一郎『四十七人の刺客』(平成4年)と比肩する戦後忠臣蔵の傑作である。

ただ、代表作といわれる『人間の証明』(昭和51年)だが肝心のモチーフが松本清張『ゼロの焦点』(昭和34年)と重なり新鮮さには欠けていた。

そして問題作『悪魔の飽食』(昭和56年)があった。
百花繚乱たる人間群像ひしめく元禄の江戸。恐るべき独裁者、犬公方をめぐって張りめぐらされた巨大な罠とは何か。その仕掛けを見破った下忍と少女の生き残りをかけた壮絶な戦いのはては!
当代一の権勢を誇る柳沢吉保の屋敷内に能を舞う将軍綱吉が突然死する。綱吉の生母・桂昌院がお気に入りの隆光僧正の奸計により、吉保は直ちに影将軍として育成したソックリさんを呼び寄せる。身代わり役が将軍に成り代わり、本物の死は秘匿される。秘事を知るものたちのすべては暗殺者集団の手にかかるがただ一人下忍・流英次郎は逃亡する。刺客の手にかかった典医・山瀬養安の娘おそでがこの逃避行に加わる。
簡潔にこの物語の枠組みを紹介した冒頭20数ページの叙述には緊張感がみなぎる。

芭蕉ゆかりの奥の細道をたどる二人の逃避行。襲い来る吉保配下の忍者軍団。
ふたりを助けるのが身分制度の底辺にある下人たちと彼らを束ねる親分衆の反権力義侠心。
両者の剣撃、忍法の死闘。
身代わり将軍の名君振りと吉保ら悪人とのネジレ現象。
赤穂浪士事件の始末や将軍後継問題の始末。
とにかく時代小説としての見せ場はいたるところにある。

飾り帯にこうある。
孤独の行路の狩人か、宿命の檻の終身囚となるか。
おれは宿命というものと、命の限り対決する
人間とは、宿命という檻の中で競り合う動物なのだ
歴史を覆す大胆な発想で、究極の悪と、人間の本性を描く
このコピーの示唆するほど深刻な人間存在の緊迫した考察が描かれているとは思えない。どちらかといえば単純な悪人・吉保と単純な善人・英次郎おそでの対決であり、勧善懲悪を前面に出した、二人の軽やかな逃避行をたどる冒険活劇の印象が強かった。

時代小説好きの読者ならたいがいは隆慶一郎『影武者・徳川家康』を読んでいるだろう。あえて同様の枠組みをしつらえたこの作品である。『影武者・徳川家康』を超えているかどうかが評価の分かれ目だと思われた。

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こんばんはー(*´−`*)ノ森村誠一さんの「正義の証明」を読みました法の裁きが及ばぬ者に、私刑人が警告を与え、償いをしていくという話です「正義」の報復はどこまで許されるのか!?正義の証明〈上〉 (幻冬舎文庫)新品価格 ¥630から(2014/3/9 19:04時点)あらゆる悪の手口を詳述したベストセラー『悪魔のガイドブック』この本にそそのかされた少女輪姦事件が発生する世間の批判は版元社長・金... ...続きを見る
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