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zoom RSS 山田風太郎 『警視庁草紙 下』 近代化という陣痛に苦悶する両者対決の行方は?

<<   作成日時 : 2016/01/31 16:09   >>

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東京を騒がせる怪事件の影で、知略によって警視庁を出し抜いてきた元江戸南町奉行の一派。業を煮やした大警視・川路はとうとう直接対決に踏み切る。同じ頃各地では、反政府派の反乱により不穏な空気が漂っていた
そんな中についに西郷蜂起す、との報が入る。その裏に隠されていた大からくりとは?そして近代化を巡る争いの帰趨とは………。華やかな明治に潜む闇の中を流浪するものたち。その哀切を描く、山田明治群像劇の一大傑作。
近代化を強引に進める大久保利通・川路利良と近代化に抵抗する元江戸南町奉行一派の対立が上巻では怪事件騒動の波紋を拡大させていった。いくつもの奇怪な出来事、そこには新体制に加わったもの、取り残されたもの、反抗するものの哀しい怨念が様々な形で描かれていた。しかし、連作短編かと思えたいくつもの事件はやがて完成する大長編小説の布石に過ぎなかった。下巻を読むとこれらの布石が収束に向かうこと一目瞭然。江藤新平・佐賀の乱(明治7年、1874)、熊本神風連(明治9年、1876)、東京神風連(こんなことがあったか?)、前原一誠・萩の乱(明治9年、1876)など不平士族の反乱が続き、ストーリーは西郷蜂起(明治10年、1877)へと向かう。山田風太郎の大胆な着想。最後の内戦こそ、権力を盤石しようとする大久保・川路が仕掛けた、いわば「謀略・西南戦争」であった。

近代化へと回る明治という歯車。その回転軸を順逆するふたり。白眉は差しで向き合った川路利良と駒井相模守の命をかけた論争だ。

駒井相模 
目的のためには手段をえらばぬあんたがたのやり口!弱いものならやむを得ぬ場合があるが、国家最高の権力を握った人間がそんなことをしてよいのか!
川路
 弱肉強食は世界永遠の相でごわす。富国強兵。手段を選んでおっちゃ、至高至急の国家の目的が果たせんでごわす。
………川路が警官隊に駒井相模捕縛の命を発しようとしたとき………。

これは明治だけのお話ではないな………と、
ギリギリとひしめく摩擦熱を前に読者は立往生せざるをえない。

忍法帳で衆目を集めたが、山田風太郎、ただものではない。

追記
西南の役の翌年に大久保利通は暗殺される。そしてその翌年に川路は宿敵井上馨に敗れて病死する。この史実を押さえておけば、まさに祇園精舎の鐘の声が聞こえるようだ。
そして読者は全く思いもよらない千羽兵四郎の馬上姿を見るだろう。不条理に生きるニヒリストというべきか。

蛇足
皇居北の丸。田安門を高麗門から渡櫓門を抜け左、左とぐるりと回って細い階段の坂を上る。高台、大変わかりにくいところで閑散とした場所があります。弥生慰霊堂という。1877年(明治10年)に起きた西南戦争に出征して戦死した警察官(警視隊員)は名誉の戦死として東京招魂社(現靖国神社)に祀られたが、凶悪犯逮捕や災害警備で殉職した警察官に対しては追悼すらなかった。そこで警察・消防殉職者のための追悼施設が設けられた。初代大警視・川路利良が明治18年(1885年)特別功労者として祀られている。



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